ソフトバンクは2013年4月30日、2012年度連結決算(関連記事)の発表に引き続き、米スプリント・ネクステルの買収に関する説明会を開催した。スプリントの買収を巡っては、米衛星放送のDISH Networkが対抗案を発表しているが、「不完全で誤解を招く説明になっている。我々の提案の方が上回っていると認識しており、条件の見直しも必要ない」(孫正義社長)と力説した。

図1●DISH Networkが主張する「スプリント株主の1株当たりの価値」の比較は「不完全で誤解を招く説明」と反論(ソフトバンク発表資料から抜粋)
図1●DISH Networkが主張する「スプリント株主の1株当たりの価値」の比較は「不完全で誤解を招く説明」と反論(ソフトバンク発表資料から抜粋)
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 孫社長は、まずDISH Networkがソフトバンク対抗のスプリント買収案で掲げる「スプリント株主の1株当たりの価値」を取り上げ、「全く異なる比較になっている」と全面否定した(図1)。ソフトバンクの試算によれば、買収後のシナジーも加味すると、1株当たりの価値は、ソフトバンク案の方がDISH案よりも21%上回っているとする。

 具体的には、DISHが主張する1株当たりの価値(7.00ドル)には新株発行による希薄化をはじめ、負債の増加(93億ドル)や現金の支出(79億ドル)の影響が加味されていないと指摘する。さらに、スプリントがDISH案を受け入れた場合はソフトバンクへの6億ドルの違約金の支払いが発生するほか、それに伴って金融アドバイザーへの支払いなど取引関連費用も増加する。買収完了時期もソフトバンク案に比べて1年程度遅れる(2014年中盤を予定)ため、価値を割り引いて考える必要があるという。

 このほか、DISH案を受け入れれば、スプリントの競争力低下も予想されるとした。スプリントは現在、「Network Vision」を掲げ、LTEの展開を強化しているが、それでもAT&Tモビリティやベライゾンワイヤレスに比べて大きく劣っている。「ソフトバンクの資金が入ればキャッチアップを急げるが、なくなれば必要な資金を得られなくなり、あと1年は遅れるだろう。完全に競争力を失うことになる」(孫社長)。