写真●富士通の山本正已社長
写真●富士通の山本正已社長
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 富士通は2013年4月30日、2013年3月期の連結決算を発表した。売上高は2012年3月期比1.9%減の4兆3817億円、営業利益は同9.5%減の952億円で減収減益となった。不振の半導体事業の再編費用などで特別損失を計上したことが響き、最終損益は427億円の黒字から、729億円の赤字へ転落した。

 富士通は同日、マイコン・アナログ事業を米半導体メーカーのスパンションに売却すると発表した。売却額は関連資産を含め約173億円で、100%子会社である富士通セミコンダクターから約1000人の従業員がスパンションへ移籍する。

 半導体事業については今年2月、パナソニックとシステムLSI事業の統合で基本合意し、主力の三重工場の300mmラインについては台湾企業と設立する製造会社に移管する方針を発表している。記者会見した山本正已社長(写真)は「半導体の構造改革については自社の体質強化に目処がつき、五合目まで来たと考えている。システムLSIの統合については(2013年度の)上期中に何とかしたい」と述べた。

 通年の業績をセグメント別で見ると、ITサービスやIT関連製品などの「テクノロジーソリューション」は売上高が前期比0.3%増の2兆9423億円、営業利益が同5.6%増の1809億円だった。大型システム案件の減少によりサーバーが苦戦したが、ITサービスでは製造業や公共分野で投資が回復した。

 PCや携帯電話などの「ユビキタスソリューション」は売上高が前の期比5.5%減の1兆902億円、営業利益は同51.7%減の96億円だった。個人向けPCの販売台数が減少し、価格下落にも見舞われた。「PCビジネスは年間で見ると赤字になった」と加藤和彦CFO(最高財務責任者)は述べた。携帯電話の出荷台数は2012年3月期の800万台から、2013年3月期は650万台に減少した。2014年3月期は520万台の出荷を見込んでいる。

 半導体や電子部品などの「デバイスソリューション」は、売上高が前期比7.6%減の5403億円、営業損益が142億円の赤字(前の期から40億円の悪化)だった。

 2014年3月期の連結業績は、売上高が前期比3.8%増の4兆5500億円、営業利益が同46.9%増の1400億円になる見通し。最終損益も450億円の黒字に転換すると予想する。半導体と欧州事業の構造改革効果で250億円、本社機能のスリム化と人員削減などで200億円、前期と比べて営業損益を改善する計画だ。IT投資については「アベノミクスの影響により、2012年度の後半から受注は回復基調にある。2013年度もITサービスは増収になる」と山本社長は手応えを示した。

■変更履歴
第3段落で、工場のラインなどについて一部加筆しました。 [2013/04/30 19:30]