2013年4月26日、ガートナー ジャパン主催の「ITインフラストラクチャ&データセンター サミット 2013」で、ガートナー リサーチのバイス プレジデントであるエド・ホルブ氏がイノベーションの推進をテーマに講演した。

 「ITインフラストラクチャとオペレーションに画期的な改善をもたらすには」という副題に絡めて、ホルブ氏はまず、ガートナーが実施したアンケート結果に触れ、企業がイノベーションを起こせない理由として「日々の作業や業務に忙殺されている」というのが一番多いことを紹介した。

写真●ガートナー リサーチのバイス プレジデントであるエド・ホルブ氏
写真●ガートナー リサーチのバイス プレジデントであるエド・ホルブ氏
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 つまり、イノベーションを起こせるかどうかは、「日々のオペレーションとの相関関係が強い」という指摘だ。加えて、組織の「縄張り争い」や「縦割り」がイノベーションを阻害しているとの結果も紹介した。

 そのうえで、イノベーションを推進する方策を大きく3つ掲げた。要約すれば、「小さな組織で、大胆なゴールを設定する」「ベストプラクティスを“崇拝”しない」「イノベーターを公の場で讃える」となる。

 ホルブ氏によれば、イノベーションは1人でも大人数でも起こしにくい。「情熱が伝播しやすい少人数でのチームプレーが適している」。

 また、ベストプラクティスという“いいとこ取り”は「企業の力を一定レベルまで底上げするのには有効だが、他社も採用しているので差異化にはつながらない。イノベーションを推進するなら、常にユニークかどうかを問うべきだ」とした。

 さらに、社内のイノベーターに対して「彼らは正しいことをした。(仮に失敗だったとしても)果敢に取り組んだことをみんなの前で賞賛すべき」とし、褒めるという報奨を勧めた。それがイノベーションを生み出す企業文化を育むという。

リーダーは部下を「同じ色」に染めるな

 イノベーションを推進するには、現場のリーダーの存在が大きい。といっても、ホルブ氏はリーダー自身が自分でイノベーションを推進せよと言っているわけではなく、「部下を自分と同じ道に進ませようとするな。自分と『同じ色』に染めてはならない」と警告する。

 それよりも、新入社員が持つ新鮮な目(フレッシュアイ)にこそ着目し、「この会社に入って驚いたこと、おかしいと思ったことはないかを聞くべきだ」と説いた。

 同様に顧客に対しては「自社のソリューションをどんな場面で使っているのかを観察し、ときには質問するとよい」として、イノベーションのヒントは実は身近なところにあることを指摘した。