「新しいコミュニケーション手段を選択すれば、より高い生産性や創造性が得られる。従来の延長線上ではない『未来志向』で選択するべきだ」。こう語るのは、ガートナー ジャパンの池田武史ガートナー リサーチ リサーチ ディレクターである。ガートナー ジャパンは2013年4月24日から26日にかけて、東京で「ITインフラストラクチャ&データセンターサミット2013」を開催。池田氏は4月24日の講演で、企業内コミュニケーションインフラの動向と、今後の方向性を解説した。

ユニファイドに再び注目集まる

 池田氏によれば、長い間「次世代のコミュニケーション基盤」として提案されてきた「ユニファイドコミュニケーション」が、改めて注目を浴びるようになってきたという。ユニファイドコミュニケーションは2000年代半ばに次世代のコミュニケーション技術として登場し、注目されたが、その後はなりを潜めている。ただ、スマートフォンの普及や音声通話のIP化の進展、SNSでユニファイドコミュニケーションに類する機能が搭載されていることなどから、再び注目が集まりつつあるという。

写真●ガートナー ジャパンの池田武史ガートナー リサーチ リサーチ ディレクター
写真●ガートナー ジャパンの池田武史ガートナー リサーチ リサーチ ディレクター
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 企業でユニファイドコミュニケーションに注目が集まっている理由はもう一つある。それは、社員の生産性や創造性を高めるために、技術を積極的に活用しようという機運がいっそう強まってきたことだ。テレビ会議やWeb会議は、対面の会議とまではいかないが、移動の時間を節約しつつ遠隔地同士のコミュニケーションを促進できる。インスタントメッセージは電子メールよりも即時性が高い一方、電話のように相手に割り込む感覚が薄いため、「メールと電話の間を埋めるような使い方が可能になる」(池田氏)。

 企業にとっては、いつでもどこでも、その場にふさわしいデバイスと手段でコミュニケーションが取れるのが理想。池田氏は、「そうした理想に近いコミュニケーション環境を統合的に構築するためのインフラとして、モバイル機器とユニファイドコミュニケーションがあらためて推奨できる」と説明する。

既存の受話器を捨てる決断も必要

 また池田氏は、こうした新しいコミュニケーション技術の効果を最大限に引き出すためにも、「使い慣れた受話器を積極的に捨てることも必要だ」と指摘する。

 オフィスでは今でもコード付きの受話器が多い。だがこれをヘッドセットに変えれば両手が空くので、資料を見たりメモを取ったりすることが容易になる。「ヘッドセットは空港などの作業現場ではすでに数多く導入されている。歩きながら話せるし、資料を見ながら話せる。作業しながら話せることのメリットは思った以上に大きい。これはオフィスワークでも同じだろう」(池田氏)。

 従来のやり方を大きく変えるような決断をするには、企業内でコミュニケーションの新しいあり方を考えてリードする人材が必要だという。「こうした人は、IT部門の所属でも、あるいは利用部門の所属でも構わない。新しいコミュニケーションのあり方について関係部署を巻き込みながら議論し、導入を推進する役割がいれば、新しいコミュニケーション技術から得られるメリットがより大きくなるはずだ」と池田氏は語った。