富士通は2013年4月24日、タブレット端末やスマートフォンを活用して製造業やサービス業、オフィスなどの業務を効率化するためのソフトウエア製品群を、同日に発売したと発表した。ユーザー企業への現場改革の提案を通じて、システム販売につなげる。

 提供するのは、タブレットやスマホ向けの業務アプリケーション実行基盤を運用するための「FUJITSU Software Interstage Mobile Application Server V1」など8製品。5月より順次出荷する。

 Mobile Application Serverのほか、現実映像に関連情報を重ね合わせられる拡張現実(AR)用ソフト「FUJITSU Software Interstage AR Processing Server V1」と、情報の活用プロセスを設計、分析できる「FUJITSU Software Interstage Business Analytics Modeling Server V1」の三つは新たに開発した製品である。

 価格は、FUJITSU Software Interstage Mobile Application Server V1が125万円(税別)より、同AR Processing Server V1が110万円(同)より、同Business Analytics Modeling Serverが350万円(同)よりなど。

過去の作業履歴情報などが現実の映像にオーバーレイ

写真1●配管の保守作業を支援するAR(拡張現実)システム
写真1●配管の保守作業を支援するAR(拡張現実)システム
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 会見では、富士通が自社工場で実際に導入した、ARを用いた作業ミス防止(ポカヨケ)のシステムを披露した。工場内の配管の点検や保守作業時に、タブレットを配管にかざすと、過去の作業履歴を閲覧できたり、点検結果を入力したりできる「吹き出し」が、パイプを開け閉めするハンドルを写した映像に重なって現れる(写真1)。

 作業履歴の確認や報告は、画面の吹き出しに触れるなどの簡単な操作で可能。これにより伝達事項をほかの作業員に確実に伝えたり、作業漏れを防止したりできる。従来は点検結果は事務所に戻って作業日誌に記入していた。結果として「ヒヤリハット(重大事故になりかねないミス)の大幅な減少につながった」という。

 このほかに、小売業で受発注のノウハウをシステム化した事例も紹介。経験の浅いスタッフでも現場でタブレットを使い、商品アイテムごとのきめ細かな商品補充を実現し、在庫を30%削減できたという。

 製品群にはデータベースの「Symfoware Sever V12」など既存製品も含まれるが、処理速度を高速化したり、無線での高速通信に適した新技術を採用したりと、スマートデバイス向けに機能強化を図った。

 会見に臨んだ統合商品戦略本部の阪井洋之本部長は「(顧客に現場の業務改革を提案する)フィールド・イノベーションや、(システム構築の前に課題や目的などを明確化する)超上流工程のコンサルティングで、富士通の提案力が高まっている」と販売に自信を示した。また、今後数年でスマートデバイスを活用した法人向けシステム商談の国内市場規模が年間5000億円に達するとの予測を踏まえ、「同市場の10~15%、500億~700億円を確保したい」との目標を明らかにした。