写真●パネルディスカッションの登壇者。右からサイバートラストの眞柄泰利社長、ソフトバンク・テクノロジーの阿多親市社長CEO、モデレータを務めた日本経済新聞社の渡辺洋之デジタル編成局長、インテルの野辺継男オートモーティブ・ソリューション・グループ チーフ・アドバンストサービス・アーキテクト兼ダイレクター、シスコシステムズの木下剛専務執行役員ボーダレス ネットワーク事業統括
写真●パネルディスカッションの登壇者。右からサイバートラストの眞柄泰利社長、ソフトバンク・テクノロジーの阿多親市社長CEO、モデレータを務めた日本経済新聞社の渡辺洋之デジタル編成局長、インテルの野辺継男オートモーティブ・ソリューション・グループ チーフ・アドバンストサービス・アーキテクト兼ダイレクター、シスコシステムズの木下剛専務執行役員ボーダレス ネットワーク事業統括
[画像のクリックで拡大表示]

 日本の産業界が持つ品質の高さは今後、世界にますます受け入れられるだろう――。電子証明書などセキュリティ分野のサービスを展開するサイバートラストは2013年4月18日、イベント「Cybertrust Conference 2013」のパネルディスカッションで、このようなメッセージを発信した。

 インテルの野辺継男オートモーティブ・ソリューション・グループ チーフ・アドバンストサービス・アーキテクト兼ダイレクターは、「クルマの差異化要因が、走る・曲がる・止まるの基本性能から、安全・安心など別の性能へと移りつつある。安全・安心やさらなる付加サービスの提供に当たっては、クルマにまつわる情報を統合的に扱うITが大きく寄与する」と語る(写真)。テレマティクスは日本でいち早く進んだが、今後は海外でも進展する。「そのとき日本のリソースやノウハウが生きる」(野辺氏)と見る。

 ソフトバンク・テクノロジーの阿多親市社長は経営者の立場から、データ分析の重要性について述べた。阿多社長は自社の経営判断にデータ分析を活用している経験から、「ITはいよいよビジネスに大きく寄与するツールになってきた」と語る。「一見ムダに見えるデータが、後になって大きなヒントを提示してくれることもある。近年ビッグデータに注目が集まっているが、企業はこれから本当にデータからひらめきを得ることになるだろう」(阿多氏)。

 ビッグデータの背後には、スマートフォンやタブレット機といったデジタル機器の浸透、そして各種のクラウドサービスの普及がある。企業システムにおいても、BYOD(Bring Your Own Devices)やパブリッククラウドサービスの活用が進んでいる。社内システムが外部のリソースをより大きく取り込もうとしている動向をして「企業システムのオープン化が進んでいる」と表現するのは、シスコシステムズの木下剛専務執行役員ボーダレス ネットワーク事業統括である。

ビッグデータ活用や安全・安心にはきめ細やかさが求められる

 オープン化が進む中、より強固なセキュリティレベルを確保するために「コンテクスト認証」が求められると言う。コンテクスト認証とは、ユーザーおよび利用端末、場所、時間、使おうとしているアプリケーション、アクセスしようとしているデータの種類などといった、総合的な文脈(コンテクスト)を踏まえて、適切な認証を実施する考え方および技術のこと。

 サイバートラストの眞柄泰利社長は、本人確認を確実にする認証情報が、時間や場所といった別の情報を結びつくことで、ビジネスに新しい価値をもたらすと語る。電子認証の情報はいわばユーザーとデジタル機器が確かにそこにあること(実在)を示すもの。これとモバイル機器が逐次発信する情報がひもづけられれば、ある個人がどう行動したかを確実に示す情報となる。「例えばだが、安全運転をしている自動車オーナーには格安の保険を提供するなど、より柔軟なビジネス展開につなげられる。海外でこういった構想を話すと非常に高い関心を持たれる」(眞柄氏)。

 ビッグデータから有用な情報を見いだすことや、安全・安心を確保するための仕組み作りには、きめ細やかさが求められる。パネルディスカッションの登壇者らは「日本人は国民性としてきめ細やかな作業や対応が得意。安全・安心に関心が高まる中、日本企業が持つ『日本品質』は今後海外で大きく注目を浴びるはず」という見方で一致。日本が持つ強みを自覚し、さらに伸長させていくことの必要性と重要性を訴えかけた。