2013年4月16日、新経済連盟が主催する「新経済サミット2013」が都内で開催された。安倍晋三首相からのビデオメッセージで幕を開け、まず午前中のセッション1では、新経済連盟の代表理事で楽天の会長兼社長である三木谷浩史氏がモデレーターを務め、Android(アンドロイド)やTwitter(ツイッター)、Skype(スカイプ)、Pinterest(ピンタレスト)の生みの親たちが顔をそろえたキーノートスピーチとパネルディスカッションを実施した。テーマは「破壊的なイノベーションとは何か?」だった。

写真1●Google上級副社長であるアンディ・ルービン氏
写真1●Google上級副社長であるアンディ・ルービン氏
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 最初に、Androidを世に送り出した、Googleのアンディ・ルービン上級副社長が登場した(写真1)。「ハードのコストはどんどん値下がりしているのに、ソフトのコストは変わらず、端末全体に占めるソフトの割合が上昇していることに目を付けた」と説明。ここからOSの無償公開に踏み切った経緯を明かした。もっとも、Androidは当初、デジタルカメラ向けに開発していたことを説明し、「スマートフォンで写真を撮る人が今後は増えると考え直し、思い切ってプランを変えた」と語った。

 その時の教訓から「最初に作った計画がうまくいかないと思ったら、すぐに方向を変える必要がある。そこで躊躇しては駄目だ。初めからいいアイデアが浮かぶわけではなく、コミュニティーの声を聞いて、柔軟に進路を変えるべき」と話した。

写真2●SquareとTwitterを創業したジャック・ドーシー氏
写真2●SquareとTwitterを創業したジャック・ドーシー氏
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 次いで登壇したのは、スマホやタブレット端末のイヤホンジャックに無料の小型端末を取り付けるだけで、誰でも簡単にクレジットカード決済ができるようになる環境を提供するSquareを共同業したジャック・ドーシー氏(写真2)。Twitterの共同創業者でもあり、花形の連続起業家(シリアルアントレプレナー)として注目を集めている人物だ。

 ドーシー氏は「自分の問題意識を行動に移すのが起業の原点だ」と語り、“ださくて面倒な”これまでのクレジットカード決済環境を何とかしたいという身近な問題に着目。だからスマホを使ったカード決済端末を開発したと解説した。会場では、モデレーターの三木谷氏からクレジットカードを借り、その場で決済してみせる実演で聴衆を大いに沸かせた。

 「SquareとTwitterには類似点がある。誰でも使えるということだ」。ドーシー氏はそう話す。友人が経営するコーヒーショップでも、レジ周りをSquareの端末で大きく変えた例をスライドで紹介。一方で「米国のスターバックスコーヒーでも使われるようになった」とし、企業規模にかかわらず、Squareの端末が受け入れられていることを説明した。

未来はまだ、配信されていないだけ

写真3●Pinterestを創業したCEOのベン・シルバーマン氏
写真3●Pinterestを創業したCEOのベン・シルバーマン氏
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 3人目は、写真共有型のSNSであるPinterestの共同設立者でCEOのベン・シルバーマン氏(写真3)。「私は世界中の人たちが、自分の好きなものを同じ興味・関心がある人たちと共有できる環境を作りたかった」と動機を語り、「そこに言葉はいらない。私が好きな写真で共有したいと考えた。テキストベースのTwitterとはその点が違った」と語った。

 最後に登壇した、Skypeの共同創業者で、現在は投資会社AtomicoのCEOであるニクラス・ゼンストローム氏(写真4)/。電話の概念を変えた無料通話のSkypeの開発秘話を語り、「自分がいつもイライラしていた海外通話料金の高さを何とか変えたかった」と打ち明けた。

写真4●Skypeの共同創業者で、現在はAtomicoのCEOであるニクラス・ゼンストローム氏
写真4●Skypeの共同創業者で、現在はAtomicoのCEOであるニクラス・ゼンストローム氏
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 Googleのルービン氏と同じく、「事業計画を1回書いただけではうまくいかない」とし、失敗を経験と捉えて前に進むことを提唱した。「日本人は最初からグローバルを目指してほしい。そのためにも、もっと海外に出ていくべきだ」とも語った。

 2つの大きな起業に成功したドーシー氏は「破壊的」という言葉が自分は好きではないと前置きしたうえで、「未来は既にある。まだ配信されていないだけだ」という言葉を紹介。「こんなものを世界中の人たちが使ったら、もっと便利になるのに」という気持ちを持ち続けて、「世の中を前に進めていきたい」と力説した。