写真●「IT戦略起草委員会」の委員長に就任した遠藤鉱一政府情報化統括責任者(政府CIO)
写真●「IT戦略起草委員会」の委員長に就任した遠藤鉱一政府情報化統括責任者(政府CIO)
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 政府のIT総合戦略本部(本部長:安倍晋三首相)は2013年4月12日、新しいIT戦略をまとめるための「IT戦略起草委員会」の初回会合を開いた。会議は非公開だったが終了後に、委員長に就任した遠藤鉱一政府情報化統括責任者(政府CIO)が議事の概要を説明(写真)。「2時間にわたって活発に議論できた」と話し、5月末に新戦略を取りまとめ、安倍政権が6月にまとめる成長戦略にも内容を反映させるというスケジュールを示した。

 新しいIT戦略に対しては、安倍首相が「IT利活用による成功モデルを提示し、民間投資や人材育成を促進する」「新しいIT社会の実現へ規制改革、ルール作りを進める」「政府は電子行政や公共データ公開を推進し、民間にもIT化推進へ慣行や業務見直しを求めていく」という三つのテーマに取り組むよう、3月29日のIT総合戦略本部の会合で指示を出している。

 遠藤委員長は、これらのテーマに当てはまるIT施策の個別のアイデアを、参加する委員や各省庁から事前に提出してもらい集約を進めていると説明した。今回の会議までに約100のアイデアが集まっており、三つのテーマに沿って分類、精査している。意見やアイデア集約に当たっては「なぜ過去のIT戦略は成果が出なかったのか理由を考えてもらった」(遠藤氏)といい、過去の反省を踏まえてPDCA(計画・実行・検証・改善)にも取り組む考えを示した。

 2時間の会合では、これらの個別の施策のほか、IT戦略の基盤となるビジョンやストーリーの議論に最も時間を費やしたという。議論の方向性として「現在の社会制度や規制はITが進歩、普及する前に考えられたものだった。今までの制度、ルールを見直し、大きく変革することを織り込んだ戦略にしていく」という考え方が共有されたという。

 例えば、個人データの企業利用や流通に関しては、「ある委員からあくまで一つの極論として、リスクを承知で利用を始めるべきだという意見が出た。リスクがあるならやらないという姿勢で、結果的に日本は他の先進国に遅れることになった」(遠藤委員長)と議論の一部を紹介した。結論を導くような議論は出なかったが、一定の匿名化処理などで個人データをビッグデータなどに活用できるようにするルール作りに前向きな姿勢を示した。

 その上で、「政府と民間ともにIT利活用が進んでいる国にもっと学ぶべき」として、利活用のベンチマークのために、視察のほか、海外に駐在している省庁職員らの意見を聴取するアイデアなどが出た。遠藤委員長は、IT利活用を進める規制改革などは、政府の総合規制改革会議や産業競争力会議と連携を取ろうとしていると説明した。

 次回の起草委員会は、4月24日の開催を予定している。