写真●内閣府大臣政務官の島尻安伊子氏
写真●内閣府大臣政務官の島尻安伊子氏
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 日本におけるIFRS(国際会計基準)適用の在り方に関して議論している金融庁企業会計審議会は2013年3月26日、総会・企画調整部会合同会議を開催した。合同会議を開いたのはほぼ半年ぶり(関連記事:IFRS適用方針を議論する金融庁審議会が4カ月ぶり開催、議論の進展なし)で、政権交代後では初めて。内閣府大臣政務官の島尻安伊子氏(写真)は「IFRS適用の在り方には様々な考え方がある。国際的に日本が孤立しないよう総合的な観点から検討してほしい」と話した。

 議論の方向性に大きな変化はなく、金融庁は「中間的論点整理を順番に議論していく」との方針を示した。中間的論点整理とは、2012年6月の合同会議で示した「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方についてのこれまでの議論(中間的論点整理)」のこと(関連記事:「連単分離を前提に議論を深める」、金融庁審議会がIFRS適用の論点整理案を提示)。合同会議では2011年6月の金融担当大臣発言に端を発し、金融庁が挙げた11項目の論点(関連記事:IFRS強制適用について11論点を提示、企業会計審議会が開催)に沿ってIFRS適用方針の見直しを進めてきた。

 中間的論点整理では、1年にわたる議論の結果を「会計基準の国際的調和」「国際会計基準の適用」など7項目にまとめるとともに、「IFRSのどの基準・考え方がわが国にとって受け入れ可能であり、どの基準・考え方は難しいかを整理することが必要である」といった方向性を示した。

 このように中間的論点整理は「議論のまとめ」の色彩が強く、これに沿っていくと以前の議論をなぞることにもつながりかねない。委員からは「金融庁として議論のロードマップや時間軸を示してほしい」との意見が出た。しかし、金融庁側は「そのような意見が多々あることは承知している」としながら、「国際情勢が大きく変化しているなか、(ロードマップや時間軸を)示すのは容易でない」との見方を示し、中間的論点整理に沿った議論を続けるとしている。

経団連が任意適用の要件緩和を提案

 その中で、今後の主要な議題の一つとなりそうなのがIFRS任意適用の在り方だ。今回の合同会議では、審議会企画調整部会臨時委員を務める谷口進一新日鉄住金常任顧問が、日本経済団体連合会(経団連)企業会計委員会での議論をまとめた「国際会計基準(IFRS)への当面の対応について」に関して説明。IFRS任意適用の円滑化を提言した。

 経団連によれば、IFRS任意適用を公表しているのは16社だが、報道などで検討中とされた企業を含めると現時点で約60社。その時価総額は約75兆円で、谷口氏は「一つの推定ではあるが」と前置きしながら、時価総額上位50社のうち約4割の企業が、IFRS任意適用を公表または検討していると考えられるとする。

 提言では、このIFRS任意適用をより円滑に進めていくための対応策として、ガイダンスの作成、実務データベースによる情報共有の仕組みの実現、IFRS策定元であるIASB(国際会計基準審議会)への意見の継続、開示の簡素化(単体開示の廃止・簡素化)、任意適用の要件緩和、などを挙げている。

 委員の一人からは、「IFRSを任意適用をする企業が自然体で増えていくことが肝要。米国ではIFRSを強制適用する可能性は小さい。IFRSを適用するかどうかを企業が選べるようにして、強制適用は無しとするタイミングに来ていると思う」と発言した。別の委員からは「任意適用を促進するプロモーションの仕組みも必要ではないか」との意見が出た。

 中間的論点整理では任意適用に関して、「現行制度の下で、IFRS適用の実例を積み上げるとともに、その中でどのような点が具体的にメリット・デメリットとなるのかを十分に把握し、それに対応するための取組みを検討・実行していくべきであると考えられる」「わが国においては、ピュアなIFRSの任意適用を認めており、この点について、対外的にも積極的に発信していくことが重要と考えられる」としている。