NTTドコモは2013年3月22日、太陽光発電によって運用が可能な「グリーン基地局」のフィールド試験を4月から開始すると発表した。グリーン基地局とは、ソーラーパネルと大容量蓄電池を備えた携帯電話基地局。災害時に停電した際に、太陽光発電によって日中の電源を確保するとともに、日中に基地局の運用に必要な発電量を超過した場合には、超過分を蓄電池に蓄えて夜間や雨天時に備えることができる。

写真1●グリーン基地局について説明する先進技術研究所 主幹研究員 竹野和彦氏
写真1●グリーン基地局について説明する先進技術研究所 主幹研究員 竹野和彦氏
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 NTTドコモは2012年3月から、神奈川県横須賀市にある「ドコモR&Dセンター」に試験用のグリーン基地局を設置し、ソーラーパネルによる発電などを検証してきた。4月からは、実際に運用中の携帯電話基地局にグリーン基地局設備を追加し、フィールド試験を行う。4月から試験を実施するのは、神奈川県、東京都、山梨県にある3カ所の基地局。2013年度上期中に、試験対象を関東甲信越地域で合計10局まで拡大する。

 フィールド試験を通じて、「ソーラーパネルの電力での単独運転のほか、商用電力の削減効果を検証していく。さらに、いかに低コストで高い性能を発揮するかということを模索する。特に重要な蓄電池のコストについては、国内外のリチウチイオン電池、ニッケル水素電池などを踏まえて最適な電池を検討し、グリーン基地局への導入を図っていく」(先進技術研究所 環境技術研究グループ 主幹研究員 竹野和彦氏、写真1)。

 竹野氏によると、グリーン基地局はソーラーパネルや蓄電池などの追加コストが必要になるものの、その分商用電力の利用を削減できるため、長期間の運用で“元は取れる”という。2~3年のフィールド試験で、実用化のメドを付けたいとしている。

既存のソーラー基地局を“グリーン化”することも可能

 神奈川県、東京都、山梨県に設置するグリーン基地局にはそれぞれ特徴がある(写真2写真3写真4)。

 神奈川県のグリーン基地局は、無線機の最大消費電力2.0kWに対してソーラーパネルの最大発電量が4.2kWと約2倍の発電力を備える。リチウムイオン電池を使った蓄電池容量は32kWhで、約16時間のバックアップが可能だ。

 これに対して、東京都のグリーン基地局は、無線機の最大消費電力600Wに対してソーラーパネルの最大発電量が1.7kWと3倍近い発電力を備える。蓄電池容量は9.8kWhで、同じく約16時間のバックアップが可能だ。ただし、蓄電池にはニッケル水素電池を使う。

 一方、山梨県のグリーン基地局は、約10年前から運用しているソーラーパネル付き基地局に、グリーン電力コントローラなどの「グリーン基地局設備」を新たにプラグインしたものだ。無線機の最大消費電力は1.2kW、ソーラーパネルの最大発電量は1.4kW。蓄電池(リチウムイオン電池)容量は16kWhで、バックアップ可能時間は約14時間だ。なおNTTドコモによると、ソーラーパネル付き基地局は、既に全国約85カ所に展開済みだという。

写真2●神奈川県のグリーン基地局(説明会のプレゼンテーション画像より)
写真2●神奈川県のグリーン基地局
説明会のプレゼンテーション画像より。
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写真3●東京都のグリーン基地局(説明会のプレゼンテーション画像より)
写真3●東京都のグリーン基地局
説明会のプレゼンテーション画像より。
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写真4●山梨県のグリーン基地局(説明会のプレゼンテーション画像より)
写真4●山梨県のグリーン基地局
説明会のプレゼンテーション画像より。
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