イギリスに本部を置くIFRS財団は2013年3月19日(現地時間)、IFRS(国際会計基準)の策定に対して助言する新たな会議体のメンバーを発表。日本で会計基準を策定しているASBJ(企業会計基準委員会)がメンバーに入った。会議体の名称は「ASAF(エーサフ、会計基準諮問フォーラム)」で、世界各国の会計基準を策定する団体の代表者12人で構成する。ASBJがASAFの議席を獲得したことで、IFRS策定の際に日本の意見が反映しやすくなるとみられる。ASAFは4月から本格的に活動する。

 ASAFはIFRSを策定するIASB(国際会計基準審議会)に対して、各国の会計基準の実情を踏まえたアドバイスやフィードバックの実施を目的に、2011年11月にIFRS財団が設置を発表した会議体だ。IFRS財団は事前に議長を除いた12人のメンバーでASAFを構成することを公表。「地理的バランスを考慮して」(IFRS財団のエグゼクティブ・ディレクターを務めるイェール・アルモグ氏)、地域別に議席を割り振っていた。

 IFRS財団が割り振った地域別の議席数は、アフリカが1、米州が3、アジア・オセアニアが3、欧州が3だ。加えて「バランスをとる」(アルモグ氏)目的で「世界全体」と呼ぶ議席を2つ用意。今回のメンバー発表では「世界全体」枠を、アジア・オセアニアと欧州に1議席ずつ割り振った。ASAFの議長はIASBの議長が務める。

 アジア・オセアニア地域ではASBJに加えて、オーストラリアと中国、そしてAOSSG(アジア・オセアニア会計基準設定主体グループ)の代表として香港が選ばれた。アフリカが南アフリカ、欧州がドイツ、スペイン、イギリスと欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)、米州が米国、カナダ、ラテンアメリカ基準設定グループの代表でブラジルとなった。

日本企業のIFRS採用議論に影響も

 ASFAのメンバーに日本が入ったことで、「IFRS策定のプロセスで日本の意見が反映されたかどうかが明確になるうえ、これまでよりも深くタイミングよく日本の意見を発信できるので日本にとってプラスになる」(ASBJの担当者)との見方が優勢だ。金融庁企業会計審議会で開催中の日本企業へのIFRSの適用議論にも影響を及ぼすとみられる。

 日本は今後、「IASBの基準策定の段階で意見発信ができる」(ASBJの担当者)ことになる。これまでIASBは必要に応じて各国の会計基準を策定する団体と意見を交換してきた。ASBJも年2回の頻度でIASBと会議を開催し、日本の会計処理の実情を踏まえた意見を述べ、IFRSの策定過程で反映するように要求してきた。ただし「これまではIASBが策定したIFRSの公開草案に対する意見発信が主で、日本の意見が反映されたかどうかが分かりにくい」(同)といった問題点があった。

 加えてここ数年、IASBは米国の会計基準とIFRSの共通化作業に重点を置き、会計基準との差異を埋めるためのIFRSの改定が増えていた。だがASAFの発足により、日本を含めたASAF参加各国と米国の立場は等しくなる。「米国に重点を置いたIFRSの改定から、各国の意見を反映するIFRSの策定へと大きく変わる」(IASBの理事)見込みだ。

 ASAFは「IFRSの策定過程でグローバルの意見を効率よく反映する」(アルモグ氏)目的で設立された。アルモグ氏は、「IFRSの採用が100カ国を超える中、各国が利用可能な高品質な会計基準を策定するために必要になった」とASAFについて説明する。ASAFはIASBに対して意見を発信するが、IFRSを策定する権限はない。IFRS財団は2年後にASAFの活動を評価し、改善計画などを策定すると決めている。