長年、米Adobe Systemsで最高技術責任者(CTO)を務めてきたKevin Lynch氏が同社を去り、米Appleに移籍したと複数の米メディア(CNBCForbesAllThingsDTechCrunch)が現地時間2013年3月19日に伝えた。

 Forbesによると、Appleの広報担当者、Steve Dowling氏が「Lynch氏はAppleのテクノロジー部門担当副社長に就任し、Bob Mansfield上級副社長の直属となる」と述べている。

 Lynch氏はクラウドサービス「Adobe Creative Cloud」の立ち上げに尽力した人物。パッケージ製品のクラウド化とサブスクリプションモデルへの移行を成功させたことがAppleに評価されたのではないかと同誌は伝えている。

 Appleでは、2012年10月にiOS部門の上級副社長Scott Forstall氏が辞任し、これに伴って組織を再編した。この時Forstall氏が担当していたSiriとMapsを、Eddy Cue上級副社長が統括するオンラインサービス部門に振り分けたが、これによりCue氏は、iCloudをはじめ、iTunes、App Store、Siri、Maps、iAdと多岐にわたる事業を統括しなければならなくなった。iCloudはたびたび問題が指摘されており、同サービスをテコ入れするためにはLynch氏のようなベテランの助けが必要だとTechCrunchは報じている(関連記事:AppleのiOS部門トップ、Scott Forstall氏が辞任)。

 一方、現在Bob Mansfield上級副社長が担当しているのは、無線通信技術や半導体設計を行うテクノロジー部門。だが、Mansfield氏は役職上、全社的に製品開発を監督するTim Cook CEOを補佐している。Appleがソフトウエアとハードウエアを分離して製品開発しない企業であるということを考えると、Lynch氏がMansfield氏の下でクラウド部門を担当してもおかしくはないという。

 なおAdobeは、米証券取引委員会(SEC)に提出した書類でLynch氏が同社を退職したことを報告している。CNBCによるとAdobeは後任のCTOを探さない。Lynch氏の役務は今後、Shantanu Narayen CEO直轄のビジネス部門と、全社的な研究/技術戦略および経営企画を担当するBryan Lamkin上級副社長に振り分ける。