図●分野別の光産業国内生産額の年度推移(出典:光産業技術振興協会)
図●分野別の光産業国内生産額の年度推移(出典:光産業技術振興協会)
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 光産業技術振興協会(光協会)は2013年3月15日、2012年度の光産業動向調査の結果を発表した。今回発表したのは、2011年度実績、2012年度見込み、2013年度予測(定性的評価)である。2012年10月に335社に対してアンケート調査票を送付。2012年12月から2013年2月にかけて102社から回答を得た。同調査は1980年から毎年実施しているもので、光産業を「情報通信」「情報記録」「入出力」「ディスプレイ・固体照明」「太陽光発電」「レーザー加工」「センシング・計測」の7分野と「その他」に分類。分野ごとの国内生産額と、日本企業の海外生産を含む全出荷額を調査・報告している。

 2012年度の調査結果を総括する形で、光産業技術振興協会 専務理事の小谷泰久氏は2つのトピックを紹介した。1つは円高と過当競争による価格低下で国内生産が大きく減ったこと。それが理由でディスプレイは大幅に落ち込んだ。もう1つは東日本大震災の原発事故などによる省エネ意識の高まり。太陽光発電や固体照明(LED照明装置など)が大きく伸びた。

 光産業全体の2012年度の国内生産額は対前年度比3.3%減の7兆624億円を見込む。分野ごとに明暗が分かれた()。太陽光発電の分野では、2012年7月に固定価格買取制度が始まり、メガソーラー建設が急増したことにより、太陽光発電システムが同74.9%増と大幅な増加を見込む。一方で、太陽電池セル・モジュールは価格下落と海外生産シフトが進み、同1.7%増の微増にとどまる。同様に、LED照明器具・装置は同113.9%増が見込まれるものの、LEDランプ単体で見ると海外生産比率が87.3%まで高まり、国内生産額は同68.0%減とマイナス成長に転じる。

 情報通信分野の2012年度の国内生産額は同2.3%減の4948億円と見る。同分野では装置や部品によって複数の項目に分けて調査しており、ここでは(1)光伝送機器・装置、(2)光ファイバー融着機、(3)通信用発光素子、(4)通信用受光素子、(5)光伝送リンク、(6)光ファイバーケーブル、(7)光受動部品――の7項目の見通しを以下に紹介する。

(1)の光伝送機器・装置は、通信事業者やサービス事業者の設備投資圧縮が前年度から継続し、同5.4%減を見込む。個別ではメトロ系が同12.1%増と伸びる。これはLTE(Long Term Evolution)サービス開始によるモバイル系ネットワークへの投資によるものである。幹線系、加入者系、映像伝送系、光ファイバー増幅器はいずれも減少となる。

(2)の光ファイバー融着機は、中国をはじめとした新興国などで光ファイバーによるインフラ整備が前年度から進められており、今年度も伸びは鈍化するものの、同1%弱の増加が見込まれている。

(3)の通信用発光素子は同18.6%増と伸びる見込み。無線基地局やデータセンター、FTTH向けの40G/100G伝送対応製品(SFPモジュールやCFPモジュール)で1.3μm帯のLD(レーザーダイオード)が使われ始めたことによる。

(4)の通信用受光素子は、上記(3)の1.3μm帯LDの適応範囲の広がりに合わせて、同23.5%増と高い伸びが見込まれている。

(5)の光伝送リンクは、コンテンツの大容量化などにより100G伝送対応製品の導入が始まり、同8.3%増を見込む。

(6)の光ファイバーケーブルは、前年度と同様にFTTH加入者数の伸びが1ケタ台にとどまり、電力会社の設備投資抑制などもあり国内市場が停滞。同2.7%減の微減が見込まれている。

(7)の光受動部品も前年度と同様に、中国など海外企業との競争で光分岐結合器などの製品価格の下落が進み、同16.0%減のマイナス成長を見込む。

 なお、情報通信分野では海外生産比率が低いため、全出荷額も同様の傾向を示す。2012年度は同2.6%減の5477億円を見込んでいる。