「ビジネスモデルの変革」が組織のミッションとして明示されているシステム部門は約4割、「ビジネスプロセスの変革」では約6割---。日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)は2013年3月13日、ビジネスイノベーション(ビジネスの変革・革新)におけるシステム部門の役割に関する調査結果を発表した。

 新たなビジネスモデルを創出したり、革新的なプロセスに変えたりするには、ITの活用が不可欠だ。当然のことながら、システム部門も深く関わる必要がある。だが、実際にどれだけのシステム部門が関わっているのかは、数字で示されることはほとんどなかった。今回の調査で実態が明らかになった。

 調査ではビジネスイノベーションを、「ビジネスモデルの変革」と「ビジネスプロセスの変革」の二つに分けて尋ねた。システム部門のミッションとして「ビジネスモデルの変革」を明示している企業は41.2%、「ビジネスプロセスの変革」を明示しているのは60.0%だった(図1)。ミッションとして明示されていなくても、こうした活動をしているシステム部門はある。だが、「組織としての役割や貢献を明確にするためにも、部門のミッションとしてビジネスイノベーションへの提案を明示する必要がある」と、JUASは提言する。

図1●システム部門におけるビジネスイノベーションのミッション定義
図1●システム部門におけるビジネスイノベーションのミッション定義
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 ビジネスイノベーションをミッションとしているシステム部門に対し、期待に応えられているかどうかを尋ねたところ、「ビジネスプロセスの変革」では73.2%が「応えられている」または「一部応えられている」と回答した。一方、「ビジネスモデルの変革」では51.7%に落ちる。4社に1社(28.3%)は、「応えられていない」と回答した。ビジネスモデルの変革は、経営層や事業部門、取引先などの理解が不可欠だ。こうしたことが、ミッションに「応えられていない」背景にあると考えられる。

 ビジネスイノベーションを成功させる最大のポイントは、「経営陣とIT部門との意思疎通の緊密さ」だ。回答企業の39.2%がビジネスイノベーションを成功させるポイントとして挙げた(図2)。1位から3位までの回答(複数回答)を合算すると約6割(59.0%)のシステム部門が、経営層とのコミュニケーションを重視している。これに続いたのが、「社内各部門とIT部門との意思疎通の緊密さ」(1位回答が18.7%、1位から3位までの合算は57.7%)、「部門横断・全社最適での業務プロセスの理解」(同15.3%、54.0%)だった。

図2●ビジネスイノベーションを成功させるポイント(1位から3位まで複数回答)
図2●ビジネスイノベーションを成功させるポイント(1位から3位まで複数回答)
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 今回の調査結果は、JUASが実施した「企業IT動向調査 2013」の速報値である。調査期間は2012年10月29日から11月19日で、東証一部上場企業とそれに準じる企業の計4000社を対象に調査を行った。有効回答数は1030社。ビジネスイノベーションのミッションに関する設問の有効回答数は1020社、ビジネスイノベーションの成功ポイントに関する設問の有効回答数は957社。