国立情報学研究所の中村素典特任教授
国立情報学研究所の中村素典特任教授
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「学認」に参加している機関とユーザーIDの数。国内のユーザーID数はおよそ70万
「学認」に参加している機関とユーザーIDの数。国内のユーザーID数はおよそ70万
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学認対応のサービスの数は100を超えた。ただし、準備中のサービスも含んでおり、2月時点で使えるサービスは50ほどだという
学認対応のサービスの数は100を超えた。ただし、準備中のサービスも含んでおり、2月時点で使えるサービスは50ほどだという
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国立情報学研究所の山地一禎准教授
国立情報学研究所の山地一禎准教授
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米国の学術認証フェデレーションである「InCommon」はおよそ600万ユーザーが参加している
米国の学術認証フェデレーションである「InCommon」はおよそ600万ユーザーが参加している
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 2013年3月4~5日、東京都内の学術総合センターで認証関連のイベント「Japan Identity & Cloud Summit 2013(JICS2013)」が開催された。その中の「学認シンポジウム」の5日のセッションで、国立情報学研究所の中村素典特任教授や山地一禎准教授が日本における学術認証フェデレーションである「学認」の最新状況と、世界的な動向を紹介した。

 学認とは、所属している大学の認証システムを利用して、学外のサービスにまでシームレスにログインできる仕組みのこと。国内の最新事情を解説したのは中村特任教授。2月1日時点では、ユーザー認証するアイデンティティプロバイダー(IdP)となっている機関は53、総ユーザー数はおよそ70万。学認対応のサービスを提供する機関(サービスプロバイダー、SP)は準備中のものも含めて105と、いずれも順調に伸びているとした。

 サービスとして、情報セキュリティーの講習といったeラーニングコンテンツも加わっている。SPが提供するeラーニングコンテンツを大学側がコースの一つとして登録し、受講者の履修状況についてSP側からフィードバックを受けるといった利用も可能になる。学認によりコンテンツを共用すれば、各機関が個別に同じような講習やサービスを導入しなくて済むため、効率化につながる。

 山地准教授は、米国やヨーロッパの状況と、各地の認証フェデレーションの相互接続について解説した。米国の学術認証フェデレーションである「InCommon」は、年々参加機関が増えており、現在およそ600万ユーザーが参加している。企業が提供するクラウドサービスをInCommon自身が主導して検証し、参加組織に対して安価に提供できるようにするなど、学術認証基盤として魅力ある存在になっている。

 参加組織が増えるにつれて対応サービスが増え、サービスの充実が新しい組織やユーザーを呼び込むといった好循環が発生している。また、病院など直接的な学術機関ではない組織からの参加希望も増えているという。その一方で、参加者増加による課題も顕在化しており、例えばIdPとSPがやり取りする属性データの効率化が求められるようになっている。問題解決や方針決定のために、各地の認証フェデレーション関係者による組織「REFEDS」が議論を続けている。

 認証フェデレーションの相互接続の動きもある。その中核の一つがヨーロッパの「eduGAIN」だ。相互接続が進むと、例えば日本の大学から世界の別の地域で展開されているサービスにシームレスにログインして利用することなどが可能になる。東南アジアで学術認証フェデレーションを使っている地域は、まだ少ない。「ヨーロッパでは、教育機関や国を超えた講義の単位交換が始まっている。日本は認証フェデレーションを整備するに当たり、先行していた米国やヨーロッパに助けてもらった。これからは東南アジアにも認証フェデレーションを広めていきたい」(山地准教授)。