写真1●ビッグデータによる新ビジネス創出について議論する、経済産業省の佐脇氏(左)、NTTドコモの松木氏(中央)、タニタヘルスリンクの坂井氏
写真1●ビッグデータによる新ビジネス創出について議論する、経済産業省の佐脇氏(左)、NTTドコモの松木氏(中央)、タニタヘルスリンクの坂井氏
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写真2●経産省が推進するビッグデータを活用する「IT融合」政策の概要
写真2●経産省が推進するビッグデータを活用する「IT融合」政策の概要
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 2013年2月28日まで都内で開催した「Cloud Days Tokyo/ビッグデータEXPO/スマートフォン&タブレット」(主催:日経BP社)で、「ビッグデータによる新ビジネス創出」と題したパネルディスカッションが行われた(写真1)。経済産業省 情報経済課課長の佐脇紀代志氏、NTTドコモ 法人ビジネス戦略部長の松木彰氏、タニタヘルスリンク 社長の坂井康展氏が、官民の立場からビッグデータを活用した日本の競争力強化について活発な議論を交わした。モデレーターは野村総合研究所 コンサルタントの鈴木良介氏が務めた。

 ディスカッションはデータを軸にした新ビジネスの創出に絞って進められた。まず経産省の佐脇氏が「データ活用の巧拙が企業の競争力を決める時代となった」と指摘。現在同省で進めている、異分野の企業や団体が連携することによる新ビジネス創出を目指す「IT融合」について説明した(写真2)。「(政府や自治体など)パブリックセクターがデータを2次利用できるようにデータを公開していくことでも、ビッグデータの活用を後押ししていく」(佐脇氏)と述べた。

 これを受けてNTTドコモの松木氏は携帯電話やスマートフォンに関連した大量の位置情報データを利用した、自治体の防災計画の作成支援を説明した。住民の動きや人口密度などの情報を可視化して自治体の持つデータと掛け合わせることで「より少ないコストで対策を立てられる。世の中の動きを、世のために使っていきたい」(松木氏)。このほかスマホの翻訳機能を活用し、日本に在住する外国人の患者に対して医師が病状などを説明をする実験を紹介した。スマホの翻訳機能と、医療情報データベースのデータを連携させることで実現しているという。

 タニタヘルスリンクの坂井氏は、体重計や歩数計などをネットにつないで健康情報を管理したり、健康関連のWebサービスと連携したりする使い方を紹介した。複数データを組み合わせた新サービス創出の可能性については「医療や健康の分野は長年の研究が相当進んでおり、その範囲では難しい面がある」(坂井氏)としたうえで、「むしろ趣味や嗜好など、健康とまったく因果関係がないように見えるデータとの相関を見いだしていくべきではないか」と指摘した。

 ビッグデータのビジネス利用では、個人情報に配慮したデータであっても蓄積していくと個人を特定する情報に変化する懸念がある。野村総研の鈴木氏は、この点にについて佐脇氏に政策面での対応を質問した。佐脇氏は「(ガイドラインなどを)誰でも使えるようにすると、内容がないものになったり、どう考えても大丈夫と思える(厳しい規制)のものになる」との考えを示し、「大事なデータであるがゆえにビジネスを展開する事業者と顧客の間で決めていくべき点ではないか」とした。

 最後に野村総研の鈴木氏が、「ビッグデータ市場は2013年度まで盛り上がるが、その後が危惧されている」との見方を披露した。「成功した企業は事例を公表せず、失敗した企業は『やはりバズワードだった』と言う」(鈴木氏)からだ。こうした状況に陥らないよう「官民が広く協力しビッグデータの普及や情報共有を図っていくべきだ」(同)と締めくくった。