写真●灰色のきょう体が同社製の基地局装置「Flexi Multiradio Base Station」。左上に乗っている白いブレードがLiquid Applicationsを構成する「RACS」と呼ぶサーバーだ
写真●灰色のきょう体が同社製の基地局装置「Flexi Multiradio Base Station」。左上に乗っている白いブレードがLiquid Applicationsを構成する「RACS」と呼ぶサーバーだ
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 フィンランドのノキア シーメンス ネットワークスはスペイン・バルセロナで開催中の「Mobile World Congress 2013(MWC2013)」において、これまでに無かった基地局ソリューションを展示している。基地局自身をキャッシュサーバー化してしまうという「Liquid Applications」だ。

 Liquid Applicationsは同社の基地局装置「Flexi Multiradio Base Station」に、「RACS(Radio Applications Cloud Server)」と呼ぶ小型のブレードサーバーのようなキャッシュサーバーを差し込むことで構成する(写真)。RACSはCPUとSSDを搭載したサーバーそのものである。

 キャッシュサーバーの機能としては、あるユーザーがコンテンツをダウンロードした場合、その最新の内容がキャッシュサーバーに貯まる。これによってコンテンツの伝送遅延を解消し、レスポンスを向上できる形だ。

 なお携帯電話事業者向けのキャッシュサーバーのソリューションとしては、これまでにもスウェーデンのエリクソンと米アカマイ・テクノロジーズによる取り組みがあった。ただしこちらはキャッシュサーバーの位置が携帯コア網の中にあり、今回のノキアシーメンスのほうがよりユーザーに近い位置にキャッシュサーバーを置くという違いがある。ユーザーに近ければ近いほどキャッシュサーバーの効果は高くなる。「基地局より先は無線区間に入るため、キャッシュサーバーの位置としては今回の形が究極」(ノキア シーメンス)という。

 Liquid Applicationsの機能はキャッシュサーバーだけではない。サーバーそのものの機能を持つため、「例えばここで、必要に応じてビデオのデータを圧縮するような様々なアプリケーションを動作させることが可能」(ノキア シーメンス)という。

 同社はこのLiquid Applicationsについて、携帯電話事業者の「土管化」を避けるための手段にもなるとしている。具体的には、インターネット上の様々なOver the Top(OTT)プレーヤーに対し、Liquid Applicationsのサーバーを使ったサービス提供を促すことで、その対価を携帯電話事業者が得ていくといったモデルを描いている。

 もちろん、このようなビジネスモデルが上手く回るようになるのかはまだまだ未知数だ。ただし単なる伝送装置としての存在だった基地局を、エッジにおけるサービスの拠点として捉え直すこのLiquid Applicationsは、これまでに無かったユニークなアイデアと言える。

[Liquid Applicationsについてのリリース]