写真●日本IBM、理事、ソフトウエア事業、インフォメーション・マネジメント事業部長の塚本眞一氏(写真:中根祥文)
写真●日本IBM、理事、ソフトウエア事業、インフォメーション・マネジメント事業部長の塚本眞一氏(写真:中根祥文)
[画像のクリックで拡大表示]

 「大量のデータを素早く分析できれば、顧客個人の視点に立ってビジネスの手を打つことができる」---。日本IBMでインフォメーション・マネジメント事業部長を務める塚本眞一氏(写真)は2013年2月28日、IT展示会「Cloud Days Tokyo/ビッグデータEXPO/スマートフォン&タブレット」で講演し、ビッグデータの大切な側面として個人データの活用が重要であると説いた。講演では、ビッグデータの歴史を振り返るとともに、いくつかの事例を紹介した。

 塚本氏はまず、イノベーション(技術などの革新)が起こっている場所と対象が以前と異なっているという部分に着目し、ビッグデータの成り立ちと定義を振り返った。これまでのイノベーションは、メインフレームがパソコンになったり、電話機が携帯電話になったりというように「大きな組織に起こる、業務主体のイノベーションが主だった」(塚本氏)ととらえる。

 ところが最近では、イノベーションが起こる場所が変わってきたという。キーワードとなる言葉が「コンシューマライゼーション」(一般消費者向けの製品や技術を業務に応用すること)である。インターネットの登場が、この流れを後押しした。2001年に5億人だったインターネットユーザーは、2012年には23億人に達した。スマートフォンの登場も大きかった。

 コンシューマライゼーションの例として塚本氏は、ソーシャルネットワーキングの活用が広がっている点について触れた。Facebookは10億人を突破しており、Google+は9カ月で1億人を突破した。「今この瞬間にもデータが作られている」(塚本氏)。1分間の間に、YouTubeなら48時間分の映像が、Twitterには10万件の投稿が、Facebookには68万件の投稿が行われている。

 塚本氏は、ソーシャルの力は大きく決して無視することはできないという。ソーシャルが影響力を持った例として塚本氏は、2011年に起こったアラブの春運動を紹介。この運動は、一人のカリスマが起こしたものではなく、Facebookのゆるやかなつながりによって、25万人以上がデモに集まったという。

個人データがビジネスの世界で重要に

 「個人はとても大事だ。世の中はもはや、個人を考えて活動しなければならない時代になった。10年前には考えられなかったことだが、わずか10年でこんなに変わった」(塚本氏)。一方で、個人に向けたビジネスには課題もあると塚本氏は指摘する。「顧客とのコミュニケーションが増えるので、分析すべきデータが膨大になる」(塚本氏)。

 塚本氏は、ビッグデータの特徴を四つの「V」で表現する。具体的には、以下の四つである。

  1. 「ボリューム」:企業のデータがペタバイト級(超大規模)になったこと
  2. 「ベロシティ」:センサーやマシンが超高頻度でデータを作るようになったこと
  3. 「バラエティ」:位置情報や映像など多種多様なデータを扱うようになったこと
  4. 「ベラシティ」:あいまいさを伴うデータを分析するようになったこと