写真●北陸先端科学技術大学院大学の情報社会基盤研究センター 助教 宇多仁氏(写真:皆木優子)
写真●北陸先端科学技術大学院大学の情報社会基盤研究センター 助教 宇多仁氏(写真:皆木優子)
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 「コストを2割削減。しかし、ストレージの容量は2倍にする」――。このような相反する2つの命題に取り組んだのが北陸先端科学技術大学院大学(以下、JAIST)だ。JAISTは、1500ユーザーが同時にアクセスしても耐えられる3ペタバイトのストレージシステムを2013年2月に導入。3月から本格運用を開始する。

 ポイントはストレージの階層化機能。自動階層化と呼ぶ。頻繁に利用するデータを高速に動作するSSDに配置し、利用頻度が少ないデータはHDDに配置する。データをSSDに配置するのか、またはHDDに配置するのかは、ユーザーの利用量に応じて自動的に入れ替えることができる。

 クラウド総合展「Cloud Days Tokyo」(主催:日経BP社)の2013年2月27日のセミナーでは、公開取材という形でJAISTの情報社会基盤研究センター助教 宇多仁氏に、新ストレージシステムの狙いや導入における注意点などを聞いた。

ブロック単位で階層化できる

 宇多氏は、ストレージの階層化によって、(1)HDDに退避したデータを使ってもアプリケーションが想定外の動作にならない、(2)ブロック単位で階層化できる、という大きく2つのメリットを享受できると話す。

 ストレージの階層化は、性能を保ちつつ低コストで大容量のストレージシステムを構築できるので、昔から利用されている。例えば、容量が必要なデータはテープデバイスに保存して、頻繁に利用するデータをHDDに置くなどだ。ところが「テープに保存されたデータを利用する際、アプリケーションの起動に1分以上かかることもある。ユーザーがアプリが反応していないと勘違いしてしまうこともある」(宇多氏)と話す。

 そこで、JAISTはSSDとHDDを使ってストレージを階層化した。特別なチューニングを施さずに12テラIOPSの性能がある。頻繁にアクセスしないデータもHDDから呼び出せるので、アプリが想定外の挙動にならないという。また、旧システムでは、頻繁にアクセスがあるデータを保存するために、比較的高価なディスクの回転数が1万5000回転/分のHDDを使っていた。新システムでは、SSDを利用するが旧システムほど高価なHDDを大量に使わないため「HDDの削減がコストカットにつながった」(宇多氏)と話す。