「Coursera」に用意された東京大学のページ。開講は9月を予定
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MOOCとオープンコースウェアの違いを示すスライド。講義の「資料」だけでなく、履修の認定を含めた「オンライン講座」を無料公開するのがMOOCの特徴だという
MOOCとオープンコースウェアの違いを示すスライド。講義の「資料」だけでなく、履修の認定を含めた「オンライン講座」を無料公開するのがMOOCの特徴だという
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MOOCが注目される理由。MOOCにより海外への認知度を高めることで優秀な留学生を呼び込める可能性や、大学の授業そのものを変革する可能性などが指摘されている
MOOCが注目される理由。MOOCにより海外への認知度を高めることで優秀な留学生を呼び込める可能性や、大学の授業そのものを変革する可能性などが指摘されている
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発表会に登壇した東京大学 理事(広報担当)の江川雅子氏(左)と、東京大学 副学長・教育企画室長の吉見俊哉氏(右)
発表会に登壇した東京大学 理事(広報担当)の江川雅子氏(左)と、東京大学 副学長・教育企画室長の吉見俊哉氏(右)
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 東京大学は2013年2月22日、インターネット上で誰でも無料で履修できる大規模公開オンライン講座(MOOC、ムーク)の提供を開始すると発表した。実証実験としてまずは2コースを英語で配信する予定。9月から順次開講し、世界各国から数万人の受講を見込む。

 インターネットを通じた大規模なオンライン講座は「MOOC(Massive Open Online Course)」と呼ばれ、ハーバード大学、スタンフォード大学、プリンストン大学など著名な大学が相次いで参入するなど、教育分野で大きな注目を集めている。主なサービス(プラットフォーム)として「Coursera(コーセラ)」「edX(エドエックス)」「Udacity(ユーダシティ)」などがあり、いずれも2012年にスタート。海外では急速に普及しつつある。

 東京大学が今回採用するのは、このうちCourseraのサービス。2012年4月のサービス開始以来、既に米国を中心とした33大学が参加し、200以上の講座を提供している。1年にも満たない期間で登録者数は270万人(2013年2月22日時点)に達した、最大規模のサービスだという。今回、東京大学を含む29大学が新たにCourseraに参加を表明し、合計62大学になる。国内の大学の参加は初めてのことだ。

 これまでも東京大学では、「オープンコースウェア(OpenCourseWare、OCW)」として、正規の授業の講義資料や講義映像を、インターネット上で無料公開してきた。同様の取り組みは、他の大学でも行われている。こうしたオープンコースウェアとMOOCの違いは、前者が「授業資料の無償公開」であるのに対して、後者は「履修認定も含むオンライン講座の無償公開」であること。具体的には、学内での講義や資料をそのまま配信するのではなく、MOOCに向けた独自の講義をスタジオで新たに収録して配信。課題を提供したり、試験を行ったりして評価まで行う。そして最後まで受講し、一定の基準に達したと評価された者には、修了したことを示す「履修証」が発行される。

 この履修証は、あくまで一定の成績で講座を修了したことを示すもので、「単位」ではない。米国では、Courseraの講義を単位として認める動きもあるというが、東京大学では単なる修了したことの証明にとどまる。ただし、この履修証が、就職や転職の際の自己PRに使える可能性もある。

 というのも、Courseraには履修証を“有効なもの”として権威付けるための仕組みが用意されている。有料で発行する履修証の場合、受講者本人が確かに講義を閲覧し、試験を受け、一定の基準をクリアしたということを証明する「認証」のシステムがあるのだ。具体的には、キーボードを打つときの癖を解析したり、Webカメラによる受講者の映像とパスポートの顔写真を組み合わせたりするなどして、受講者本人を認証する。これにより、履修証によって受講者の成績を証明できることになる。

 この認証付きの履修証は有料で、30~100ドルで発行できるという。一方、無料の履修証は、一定の基準を満たした受講者にPDFで発行されるだけで、受講/受験したのがその本人であるかどうかの認証はされない。東京大学では現在、履修証の発行手続きをどのようなものにするのか検討中だという。

 東京大学が9月に開講するのは、政策ビジョン研究センター安全保障研究ユニット長・大学院法学政治学研究科 教授の藤原帰一氏による「戦争と平和の条件(Conditions of War and Peace)」と、カブリ数物連携宇宙研究機構 機構長・特任教授の村山斉氏による「ビッグバンからダークエネルギーまで(From the Big Bang to Dark Energy)」。いずれも英語で配信する。

 東京大学 副学長・教育企画室長の吉見俊哉氏は、「それぞれの分野の世界的なトップランナーで、英語で魅力的な講義をできる、グローバルな教養人を選んだ。これが東大の授業だということを示したい」と意気込む。また、東京大学 理事(広報担当)の江川雅子氏は、「残念ながら、東大も世界ではまだ十分に知られていない。今回の取り組みには、今までリーチできていなかったところへ東大の教育サービスを知ってもらうという意味がある。そして大学の国際化をさらに進めたい」と実証実験の狙いを説明した。