総務省の「モバイル接続料算定に係る研究会」は2013年2月22日、携帯電話の接続料の適正化に向けた報告書案をまとめた。現状は携帯電話事業者ごとに接続料の格差が生じており、その水準を巡って事業者同士が激しくぶつかり合うことも少なくなかった。既存の算定ルールの精緻化を図り、格差の是正につなげる。

 接続料の算定方法は、総務省が2010年3月に策定した「第二種指定電気通信設備制度の運用に関するガイドライン」で考え方が示されている。だが現状は算定方法の細かい部分で事業者ごとに違いが生じており、火種となっていた。2011年には、NTTドコモがソフトバンクモバイルの接続料が高いとして総務省の紛争処理委員会にあっせんを申請。ソフトバンクグループがこれに応酬するといった事態に発展した(関連記事、最終的には両社の合意を得られず打ち切られた)。

 総務省はこうした状況を問題視し、研究会を設置して接続料の適正性や透明性、公平性を高めるための算定ルールを議論してきた(関連記事)。報告書案では、「設備区分別算定を用い、機能や設備区分ごとに費用や利潤、需要を整理して総務省に提出」「一部の営業費用は接続料原価として許容するが、設備の安定的な運用や効率的な展開に必要なものだけに限定し、その必要性を総務省に十分説明する」など、既存ガイドラインよりさらに細かくルールを明確化した。

 総務省は2月25日に報告書案を公表し、パブリックコメントを募集する。携帯各社が3月にも申請する2012年度接続料も報告書案に沿ったものになるとみられ、接続料格差がどの程度縮まるかに注目が集まる。

 研究会は、日本通信とNTTドコモの紛争(関連記事1関連記事2)を受け、パケット接続料に関する算定ルールも議論していた。だが、事業者間で意見が一致せず、さらなる調査や議論が必要と判断。報告書案では、今後の検討ポイントの指摘だけにとどめた。

 接続料は現状、適用年度の前年度の実績値に基づいて算定しているが、MVNO(仮想移動体通信事業者)に不利な面もある(関連記事)。このため、当年度の実績値に近くなるような算定方法の導入も検討する。ただ今後の予定は決まっておらず、まず総務省で検討を進め、必要に応じて研究会を開いて議論していく。