図1●今回開発した同時伝送の特徴
図1●今回開発した同時伝送の特徴
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 KDDIとKDDI研究所、ジュピターテレコム(J:COM)は2013年2月6日の記者会見で、フルハイビジョンとスーパーハイビジョン(4K、8K)の超高精細映像を高圧縮して、同時に伝送することが可能な映像圧縮符号化方式を開発したと発表した。

 ケーブルテレビにおける1チャンネル当たりの情報レートを38.88Mbps(256値QAM利用時)としてチャンネル数に換算した場合、「従来のフルハイビジョン映像の伝送には1チャンネル分の、スーパーハイビジョンの4K映像には2チャンネル分の、8K映像には5チャンネル分の帯域が必要になる」(KDDI 理事 技術 統括本部 技術開発本部長の渡辺文夫氏)という。今回の方式では、4チャンネル分の帯域でいわゆるフルHDの映像と4K映像、8K映像の同時配信が可能となるという(図1)。

 同日の会見では、ケーブルテレビ網を利用した伝送実験のデモを報道陣の前で行った。従来のケーブルインターネット伝送技術を活用して、フルHDと4Kおよび8Kの映像をまとめて配信した。J:COMは今回の成果として、既存のケーブルテレビ機器を活用して簡便に伝送回線を構築した点を挙げた。

 一方、KDDIとKDDI研究所は、効率的な圧縮技術を開発し、伝送に必要な容量を大幅に削減した点を成果とした。今回、開発したのは、「8K映像の高圧縮技術」と「ハイビジョンと4K、8Kの映像をまとめて圧縮する技術」の二つである。

 8K映像の高圧縮技術では、8K映像の特徴を用いて圧縮率を大きく改善し、従来方式(H.264)の半分以下とした。8K映像をH.264で圧縮すると160Mbpsとなるが、今回の圧縮技術では70Mbpsとなる。最新の国際標準方式である「HEVC」に比べても12~13%向上しているという(図2)。

 ハイビジョンと4K、8Kの映像をまとめて圧縮する技術は、各解像度の映像の差分情報を用いて圧縮する階層符号化方式によって実現した。ハイビジョン映像はそのまま圧縮する(8Mbps)。4K映像はハイビジョン映像との差分のみを対象に圧縮を行い(20Mbps)、8K映像は4K映像との差分のみを対象とする(62Mbps)。これにより、ケーブルテレビ4チャンネル分の帯域で3種類の映像の伝送を可能にした(図3)。

図2●8K映像の高圧縮技術
図2●8K映像の高圧縮技術
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図3●フルHD/4K/8K映像をまとめて圧縮する技術
図3●フルHD/4K/8K映像をまとめて圧縮する技術
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