写真1●2012年4~12月期連結決算を発表するNTTドコモの加藤薫社長
写真1●2012年4~12月期連結決算を発表するNTTドコモの加藤薫社長
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写真2●LTEサービス(Xi)を2013年度中に受信最大150Mビット/秒に高速化
写真2●LTEサービス(Xi)を2013年度中に受信最大150Mビット/秒に高速化
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 NTTドコモは2013年1月30日、2012年4~12月期連結決算(米国会計基準)を発表した。売上高は前年同期比で6.2%増の3兆3707億円、営業利益は同5.6%減の7021億円と、増収減益だった。スマートフォンの販売が好調でパケット収入や端末販売収入が伸びたが、販促費が増えたほか、ドコモクラウドなど新領域への投資がかさんで減益となった。

 2012年10~12月期は、KDDI(au)とソフトバンクモバイルが9月に発売したiPhone 5の影響をまともに受け、MNP(モバイル番号ポータビリティ)の転入超過数が53万4000件と過去最悪を記録。純増数も20万1500件と伸び悩んだ。

 これについて、加藤薫社長(写真1)は「10月と11月はかなり厳しかった。12月は回復こそしたものの、我々が望むレベルになく、厳しい状況は変わらない。一方、(dマーケットをはじめとした)新領域の立ち上がりは順調で、一定の成果を得られた。引き続き、危機感を持って経営に当たり、総合力を磨き直すことで、営業利益9000億円の早期達成に再挑戦したい」と総括した。

 具体的には、端末の選択と集中を進め、競争力を強化していく。同社のスマートフォンはラインアップの豊富な点が特徴だが、ユーザーには伝わりにくい面がある。春モデルの「XPERIA Z SO-02E」や「XPERIA Tablet Z SO-03E」のような話題の機種を積極的に訴求していくほか、魅力のある最新機種を先行投入してラインアップを絞り込んでいく。端末ラインアップは「急に半減するとかではなく、売れると思うものを目利きし、ターゲットを絞った結果として数が減ることになる。(来)冬モデルから影響が出ると思う」(加藤社長)とした。

 並行してネットワーク設備の強化も進める。LTEサービスでは春モデルの一部機種から、受信最大112.5Mビット/秒の高速通信に対応したほか、2013年度中に同150Mビット/秒への高速化も予定する(写真2)。加藤社長は詳細について説明しなかったが、LTE-Advancedのキャリアアグリゲーションではなく、1.7GHz帯周波数の5MHz幅×4を用いて実現するとみられる。

 サービス面ではしゃべってコンシェルやdビデオなどが好調。しゃべってコンシェルはインストール数が700万件を超え、利用数は2.8億回を突破したという。dビデオの契約数も370万件まで増えたとする。

 今後、重点的に取り組む分野としては「健康」を挙げた。同社はオムロンヘルスケアと組み、健康・医療支援サービスを展開する方針を発表済み。スマートフォンや健康機器(体組成計や血圧計など)から得たヘルスケアデータを同社のクラウドで一元管理し、らでぃっしゅぼーやの健康食材やドコモ保険といった既存商品やサービスと組み合わせて、顧客に提案していく。詳細は2012年度内に発表する予定だ。

 2012年4~12月期の主な指標数値は以下の通り。まず、パケット収入は前年同期比で7.7%増の1兆4769億円。ARPU(契約当たり月間平均収入)は、総合ARPUが前年同期比で310円減の4890円。音声ARPUが同470円減の1800円。パケットARPUが同110円増の2690円。スマートARPUが同50円増の400円。

 端末の販売台数は同14%増の1757万台、このうちスマートフォンが同75.2%増の969万台と順調に進ちょくした。2012年度末では前者が2380万台、後者が1400万台を見込む。MOU(契約当たり月間平均通話時間)は119分、解約率は0.80%だった。加藤社長は解約率改善について、「まずは0.60%を目標に早期に達成したい」とした。

2013年秋をメドにdマーケットでファッションサイト新設

 NTTドコモは同日、婦人・紳士服のネット販売を手掛けるマガシークに対して、TOB(株式公開買い付け)を実施するとも発表した。マガシークはファッションサイト「MAGASEEK」などを運営し、20~30代の女性を中心に顧客基盤を持つ。2012年12月末時点の総会員数は167万7997人、アクティブ会員数は32万1793人。同社のノウハウを活用し、2013年秋をメドにNTTドコモのdマーケット内にファッションサイトを新たに立ち上げる。

 NTTドコモの買い付け価格は普通株式1株当たり13万5000円で、発行済みの普通株式など8829株以上(41.67%以上)の取得を目指す。このうち、8342株(39.37%)ついては親会社の伊藤忠商事から応募の合意を得ている。伊藤忠商事は引き続き、5298株(25.00%)を保有する方針で、小学館や集英社、講談社などの既存株主が全て応募した場合はNTTドコモが75.00%を保有することになり、最大買い付け総額は約21億5000万円となる。

 マガシークは2003年4月1日に事業を開始。東証マザーズに上場しており、2012年3月期の売上高は96億9800万円、営業利益は2億2500万円の業界2位とされる。従業員数は89人。