運用ガイドライン委員会の様子
運用ガイドライン委員会の様子
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 出版社や著作者の関連団体は合同で2013年1月23日、出版社に対する著作隣接権の設定を議論する「『出版物に関する権利』運用ガイドライン委員会」の第1回会合を開いた。著作権法が改正された場合の課題を洗い出し、出版社と著作権者の間で運用の合意を得ることを目指す。

 出版社の著作隣接権については、これまで中川正春衆議院議員を座長とする「印刷文化・電子文化の基盤整備に関する勉強会」が議論を進めてきた。同勉強会では、出版社の著作隣接権を「出版物に係る権利(仮称)」と定義し、著作権法の改正を目指す骨子案を2012年10月にまとめていた。今回の運用ガイドライン委員会は、これまでの勉強会での議論を受けて開催されもの。「出版社と著作者間でお互いの誤解や思い込みを解く」(副委員長の山田健太専修大学文学部教授)ことを目指す。出版社、著作権者、そのほかの利害関係者など複数の関係団体が審議を進め、2013年4月下旬をめどにガイドライン案を決定する。

 著作隣接権は、レコード会社やテレビ局など著作物を伝達する事業者が持つ権利のこと。音楽や動画などのコンテンツがネット上などで違法に配信されていた場合に、著作隣接権に基づいて違法であることを主張できる。しかし、現状の著作権法においては、出版社は著作隣接権を持っていない。このため、違法に書籍コンテンツが配信されていた場合に、出版社がコンテンツの取り下げなどを主張しづらいという問題があった。一方で、出版社が新たな権利を持つことで、著作権者が不利になるという懸念の声もある。