写真●クラウドサービスの海外展開について説明するIIJの鈴木幸一社長
写真●クラウドサービスの海外展開について説明するIIJの鈴木幸一社長
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 インターネットイニシアティブ(IIJ)は2013年1月21日、IIJグローバルソリューションズの上海現地法人を通じ、中国でクラウドサービス「IIJ GIO CHINA」を始めたと発表した。IIJの海外におけるクラウドサービスの提供は米国に次いで2カ国目。説明会に登壇した鈴木幸一社長(写真)は、年内にロンドンやシンガポールをはじめ、欧州や東南アジアへの展開も加速していく方針を示した。

 新サービスは、中国固定通信最大手のチャイナテレコムと合同で展開し、IIJ GIO Solutions CHINAがサービスを構築・運営する。まず「仮想サーバ」と「物理サーバ」の2種類のIaaSを用意した。料金は日本とほぼ同じレベルで月額350元から。設備は上海のデータセンター内に設置してあり、閉域網による接続も可能。中国語・日本語・英語の3か国語で対応できるサポートセンターも用意した。

 新サービスの最大の特徴は、遅延が少なく快適に使える点。日本国内のサービスを現地から利用してもらう方法も考えられるが、遅延とゆらぎが大きく通信が不安定になる問題がある。特に夕方から深夜にかけて遅延が大きくなる傾向にあり、例えば上海から日本にある1.3Mバイトのファイルをダウンロードするだけで、48秒もかかってしまうことがあるという。

 とはいえ単純に現地に設備を置けば良いというわけでもなく、通称、「中国のインターネット南北問題」と呼ぶ課題が立ちはだかる。中国固定通信大手チャイナテレコム(CT)とチャイナユニコム(CU)間の接続回線が細いため、時間帯によってはひっ迫し、通信が海外経由となってやはり大きな遅延が発生する。CT内、CU内で完結する通信であれば快適だが、CTのクライアントからCUのサーバー、またはCUのクライアントからCTのサーバーへの接続になると、遅延が激しくなる。

 そこで新サービスではCTとCUの双方のIPアドレスを持たせた公開サーバーを用意。専用ゲートウエイでクライアントの送信元アドレスを確認し、遅延の小さいIPアドレスを自動選択して通信する独自の仕組みを用意した。同ゲートウエイの有無でレスポンスに5倍の差が出ることもあるという。