優秀な学生を求めて競争する大学にとって、学習や研究に必要なICT(情報通信技術)環境を整備することは、重要な課題である。ICT環境の充実度や使いやすさが、学習や研究の効率や品質を左右するからだ。

 東京電機大学は、東京都足立区に新設した「東京千住キャンパス」への移転と並行して、ICT環境の見直しに取り組んだ。目的は、学生がいつでもどこでも必要な学習環境を利用できるようにすることだ。

 同大学の学生は、WordやExcelといったOfficeソフトに加えて、CADソフトや統計処理ソフトなど、理工系に特有の高価なソフトウエアを使って学習するケースが多い。こうしたソフトは学内のPC教室にあるパソコンでは利用できても、学生が自宅や外出先でいつでも使える環境にはなかった。

 「学生は入学時にパソコンを用意することになっている。しかしCADや統計処理のための高価なソフトウエアまで購入するよう求めるのは難しい」と、東京電機大学総合メディアセンター長である和田成夫教授は話す。こうしたソフトを使って学習するには、大学のPC教室に足を運ぶしかなかった。

 この状況を改善し、時間を有効に活用して自習できる環境を整えるべく、同大学は2012年4月、「仮想デスクトップ」システムを導入した。仮想デスクトップは、仮想化ソフトを使ってサーバー上で複数のクライアントOSを動かし、その画面情報だけを端末に送信する仕組み。大学にとっては、システム全体を集中管理できるため、コスト削減効果も期待できる。

東京電機大学が導入した仮想デスクトップでCADソフトを使用する様子
東京電機大学が導入した仮想デスクトップでCADソフトを使用する様子

 学内で仮想デスクトップを利用する際は、東京千住キャンパス、埼玉鳩山キャンパス、千葉ニュータウンキャンパスにある合計約800台の「シンクライアント端末」を使う。従来使っていたパソコンを全面的に入れ替えた。学外からは、学生が個人で所有するPCやタブレットを使って、インターネット経由で仮想デスクトップを利用できるようにした。