写真1●「Scratch」を用いた公開授業の様子
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写真2●2輪車の模型。Arduino互換のセンサーボード「NanoBoard AG」を搭載する
写真2●2輪車の模型。Arduino互換のセンサーボード「NanoBoard AG」を搭載する
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写真3●プログラミングに集中する生徒
写真3●プログラミングに集中する生徒
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 都内の板橋区立上板橋第二中学校で2012年12月21日、オープンソースのビジュアルプログラミング環境「Scratch(スクラッチ)」を用いた公開授業が行われた(写真1)。今年から全面的に履行された新学習指導要領に基づき、「プログラムによる計測・制御」が必修になったことを受けて、Scratchとセンサーを使ったプログラミングを中学2年生の技術家庭科の授業で実施したもの。「応用が効き、発展性のある教材を使いたい」(担当の新村彰英教諭)という考えから、市販の教材に頼らずにセンサーを備えた手作りの模型とオープンソースのプログラミング環境を用いて授業を行った。

 中学校の技術・家庭科の技術分野では「プログラムによる計測・制御」の授業が必修になった。それを受けて、各種センサーを備えたグループ学習用の市販教材などを使った授業が行われつつあるが、プログラミングをどのように教えたらよいか戸惑っている先生もいるようだ。

 上板橋第二中学校では、今年11月から全6回の予定でScratchとセンサーを用いた授業を週1で実施。今回はその最後の授業を公開した。内容は光学センサーを備えた2輪車の模型(写真2)をUSB経由でパソコンにつなぎ、それをScratchによるプログラミングで制御するというもの。

 生徒たちは、最初にScratch上のオブジェクトを模型に見立ててその動きをプログラミングする。プログラミングが完成したら、オブジェクトを模型のモーターに差し替えて模型そのものを実際に動かせるようにする。

 授業はパソコン室で、約30名弱の生徒たちに1人1台のパソコンと模型、および大型スクリーンにディスプレイ画面を映し出すプロジェクターを使って行われる(写真3)。授業の手順は以下の通り。先生が課題とヒントを提示したのち、生徒たちがプログラミングする。課題ができた生徒のプログラムを大型スクリーンに表示し、それを参考にまだ課題のできていない生徒がプログラムを完成させる。

 新村教諭によれば、Scratchとセンサーを用いたプログラムの利点は、「応用が効くことと、比較的安いこと」。Scratchは無償で利用できるうえ、模型も1台2000円ほどでできるため市販の教材よりも安く済むという。また、生徒たちにも「プログラムを変更したらすぐに動かして試せるので楽しい」ことから好評のようだ。

 授業での難点は、「技術の授業が週1だけなので、生徒たちが習った手順を忘れがちなことと、プログラミングのポイントだけしか教えられないこと」(新村教諭)。ただし、先生から見ると物足りない部分があるものの、「自らの手で動作するプログラムを作り上げることで、生徒たちはかなりの達成感を得ている」(同)とも捉えている。新村教諭は生徒たちの応用力を高める狙いから、今後もScratchを題材にしたプログラミングを広めていきたいと考えている。