日本通信は週内にも、NTTドコモが電気通信事業法第34条(第二種指定電気通信設備との接続)に違反している可能性があるとして、総務大臣に意見申請する。日本通信によると、NTTドコモはMVNO(仮想移動体通信事業者)に設備を貸し出す際に、本来は電気通信事業法第34条の「接続」に該当するにもかかわらず、「卸」と称して規制の適用を回避しているという。

 NTTドコモをはじめとした携帯電話大手3社は、有限で希少な周波数の割り当てを受け、市場支配力を有するため、「第二種指定電気通信事業者」として規制対象となっている。他の通信事業者の設備との接続について、接続条件や接続約款を事前に総務大臣に届ける義務がある(事業法第34条2項)。

 一方、MVNOが携帯電話事業者から設備を借りる方法としては、主に「卸」と「接続」の2種類がある。「卸」はいわゆる回線の再販で、携帯電話事業者が相対で接続条件や料金を決められる。もう一つの「接続」は携帯電話事業者とMVNOがPOI(相互接続点)を責任分解点として互いのネットワークを接続するもので、接続条件や料金は上記の接続約款に基づく。

 日本通信が問題視しているのは、NTTドコモがMVNO向けに提供するメニュー(NTTドコモのサイト、PDF)において、本来は「接続」に該当するサービスが「卸」として提供されている点。「接続」の場合は事業法第34条の規制対象として厳しい監視下に置かれるが、「卸」は事業法第34条の適用を受けない。呼称を変えるだけで規制を免れることができてしまう抜け道になっており、電気通信事業法第34条の趣旨である公平性や透明性の面で問題があると主張する。

 要は「接続」の定義によるわけだが、「電気通信設備相互間を電気的に接続すること」や「相互間で通信が可能な状態でなければ『接続』とはならない」といった解釈が一般的となっている。これに照らし合わせてNTTドコモのメニューを見ると、明らかに「接続」に該当するサービスが「卸」になっているという。

 あとは「卸」と「接続」についてどれだけ解釈を広げる余地があるかという問題になりそうだが、事業法第186条4号では「事業法第34条4項に違反して協定又は契約を締結し、変更し、又は廃止した者は200万円以下の罰金に処する」との規定がある。「罰則を設けておきながら解釈の余地があり、定義が不明確というのはおかしく、刑法の基本理念である『罪刑法定主義』にも抵触する」(日本通信の幹部)。

 そこで日本通信は、「接続」についての総務省の見解、ならびにNTTドコモの違法性の有無とその根拠などを明示するように求める。仮に違法と認められた場合、NTTドコモは「卸」扱いで「接続」しているMVNO各社との契約の見直しを迫られるほか、判断によっては各契約ごとに200万円以下の罰金を課せられる可能性もある。今回、日本通信が問題視したのはNTTドコモのメニューについてだが、KDDIやソフトバンクモバイルも同様なメニューを用意しており、影響が広がる可能性もある。

 電気通信事業法では、第172条(意見の申出)で、「通信事業者の料金や提供条件などについて苦情や意見を受け付け、総務大臣は申し出を誠実に処理しなければならない」との決まりがある。日本通信は同制度を活用して意見を申請する。同社は2012年12月3日にも、NTTドコモの通信原価の算定方針について総務大臣に苦情を申請している(関連記事)。