金融庁は2012年12月11日、第32回企業会計審議会監査部会で「監査における不正リスク対応基準(仮)」の公開草案原案を公表した。財務諸表監査を担当する監査人が、財務諸表の重要な虚偽表示につながる不正なリスクに対応できるようにするのが狙いで、監査基準や監査に関する品質管理基準とは独立した基準とする。

 12月中にも公開草案を公表してパブリックコメントの募集を開始。結果を反映して2013年春の基準化を目指す。主に金融商品取引法に基づく公開企業を対象に、2014年3月期決算に関わる監査から適用を開始する計画だ。

 不正リスク対応基準はオリンパスなどの不正会計事件を契機に、不正リスク(不正による重要な虚偽表示のリスク)に対応した財務諸表監査の進め方を明確化することを狙ったもの。ここでいう不正とは、経営者や従業員、第三者などが不当・違法な利益を得たりするために、他者を欺く行為を指す。基準原案は、(1)職業的懐疑心の強調、(2)不正リスクに対応した監査の実施、(3)不正リスクに対応した監査事務所の品質管理、の三つで構成する。

 (1)については、現行の監査基準で監査の際に監査人に対して「懐疑心を保持」するよう求めている。(1)ではより表現を強めて、監査人は「職業的懐疑心を発揮して」、不正リスクの評価や、識別した不正リスクに対する監査手続きの実施、入手した監査証拠の評価、重要な虚偽表示の疑義に該当する場合はそれに対応した監査手続きを進めなければならないとする。

 (2)では、監査の各段階における不正リスクに対応した監査手続きを規定している。監査計画の作成、不正による重要な虚偽表示を示唆する状況の確認、不正による重要な虚偽表示の疑義があると判断した場合の監査手続き、不正リスクに関連する審査などについて説明している。

 (3)は、不正リスクに対応した監査手続きを実施するための監査事務所としての品質管理について規定している。不正による重要な虚偽表示の疑義があると判断した場合の審査や、監査事務所が交代する場合の監査事務所間の引き継ぎなどについて説明している。

 このほか付録として、不正リスク要因の例示と、不正による重要な虚偽表示を示唆する状況の例示を示している。前者では、会計システムや情報システムが有効に機能しておらず、内部統制が不備を有しているといった例を示している。