NTT、NEC、富士通の3社は2012年12月11日、1チャネル当たり400ギガビット/秒級のデジタルコヒーレント光伝送技術の実用化に向けた共同研究開発を開始すると発表した。デジタルコヒーレント光伝送技術とは、コヒーレント受信とデジタル信号処理を組み合わせた次世代光伝送方式。これにより、超高速かつ低消費電力で柔軟性を兼ね備えた光ネットワークの実現を目指すとともに、光伝送技術の向上とその成果のグローバル展開を目指す。

 この研究開発は、総務省の委託研究「超高速・低消費電力光ネットワーク技術の研究開発」を受託して進める。3社は過去にも総務省からの委託研究により、100ギガビット/秒のデジタルコヒーレント光伝送方式の研究開発を実施し、2012年にはデジタルコヒーレントDSP-LSIを商用化した実績がある。今回はさらなる大容量光伝送と低消費電力の実現を目指し、400ギガビット/秒級の光伝送方式の実用化に向けて要素技術の研究開発に取り組む。

 この共同研究では、100ギガビット/秒伝送で採用している4値位相変調に加え、さらに多値化を図った16値の直交振幅変調を採用し、400ギガビット/秒級の超高速光伝送を実現する。これを60チャネル高密度多重することで、1本の光ファイバー当たり24テラビット/秒級の光ネットワークを実現するという。

 低消費電力化には、装置数の削減につながる長距離伝送技術が必要となるが、これまで多値変調信号の長距離化の主要制限要因であった光ファイバー中の非線形光学効果についての補償技術を確立し、世界初の実用化を目指すとしている。この成果と、これまでに確立した波長分散・偏波モード分散補償技術の高性能化と合わせ、長距離伝送を実現する。さらに、伝送路の状況に応じて、同一のハードウエアでさまざまな変調方式を実現する適応変復調技術の実用化を進め、柔軟なネットワークを構築するとしている。

 今回の共同研究により3社は、2014年までに以下のような次世代光ネットワーク技術の実現を目指すとしている。

  1. 1チャネル当たり400ギガビット/秒級、ファイバー当たり24テラビット/秒級の超高速・大容量光伝送の実現
  2. 性能劣化要因である光ファイバー伝送路の波長分散、偏波モード分散、非線形効果を補償する機能の実現とそれに伴う伝送距離の向上(従来の2倍以上)
  3. 装置数の削減によるネットワーク消費電力の大幅な削減(従来の2分の1以下)
  4. 同一ハードウエアでの適応変復調による柔軟なネットワークの構築