経営が悪化している半導体大手のルネサス エレクトロニクスは2012年12月10日、新株発行による第三者割当増資を実施し、1500億円を調達する方針を正式に発表した。新株の株価は1株120円で、10日の東証終値(308円)に比べて約6割安い。

 時価より大幅に安い価格での新株発行は既存株主にとって不利になる。このため、2013年2月に開催予定の臨時株主総会において、既存株主が承認することが資金調達の前提となる。

 新株は、官民共同ファンドの産業革新機構が大半を引き受け、持株比率69.16%を握る筆頭株主となる。ルネサスからマイコン製品の供給を受けるトヨタ自動車、日産自動車、ケーヒン、デンソー、キヤノン、ニコン、パナソニック、安川電機の8社もそれぞれ新株を引き受ける。

 増資が実行された場合、ルネサスの母体企業で、既存の主要株主である日立製作所、三菱電機、NECの3社による持株比率はそれぞれ7.66%、6.27%、8.87%まで大幅に低下。いずれも主要株主ではなくなる。3社は保有するルネサス株の資産価値低下による不利益をのむ代わりに、不振のルネサスが本体の業績に与える影響を軽減する。

 ルネサスは調達した資金のうち、「マイコンの先端プロセス開発及び開発基盤の標準化に係る投資」「自動車向け半導体におけるソリューション投資」「産業向け半導体におけるソリューション投資」の3分野にそれぞれ400億円を振り向ける。自動車用や制御機器用のマイコンを中核として製品力を強化し、競争が激しい半導体市場の中で生き残りを図る方針だ。

[ルネサス エレクトロニクスの発表資料(PDF)]