長野県内の地方公共団体や放送会社らとともに「防災・減災のための放送利用行動計画」の策定を進めている総務省信越総合通信局は、2012年12月5日に「防災・減災のための放送利用行動計画(第一次)」と「臨時災害放送局の開設等に関する手引き」の素案を公表した。

 行動計画の素案は、同計画の推進向け2012年10月22日に発足した連絡会のメンバーを中心に検討を進めているもので、計画への参加希望者に向けて、広く現時点での案を公表したという。同じく素案を公表した臨時災害放送局の開設等に関する手引きは、行動計画の中で取り上げているもので、臨時災害放送局の開局を準備する市町村のために信越総合通信局が策定した。

 この計画に基づく行動は、年明けから準備が整った地域から始動する。今年度内には長野県内の体制が整う見通しという。新潟県についても「防災・減災のための放送利用行動計画(第二次)」に向けて関係者との協議や調整を行い、今年度内に公表できるように作業を進める計画。

<ケーブルテレビ会社の役割に期待、臨時災害放送局開局支援の手引き作成へ>
 臨時災害放送局は、災害が発生した場合にその被害を軽減するために開設する臨時、かつ一時の目的のためのFMラジオ放送局(出力は最大100W)で、免許主体は地方自治体である。その形態は「被災自治体を免許人として新たに臨時災害放送局を立ち上げる」と「既存のコミュニティFM局(出力は最大20W)が臨時に移行する」の大きく二つある。行動計画では、この臨時災害放送局を速やかに開局できるように、市町村と放送事業者(コミュニティFM、ケーブルテレビ、県域ラジオ)、信越総合通信局の間で事前にハード・ソフト面で協議し、必要なものを事前に準備し体制を整備し、いつ発生するかわからない災害に備えようというのが基本的な考え方である。

 行動計画では、特に日ごろから地域に密着した放送を展開するコミュニティFMやケーブルテレビ会社のハード・ソフトを活用することで、迅速に臨時災害放送局を開局し、宅内や社内には情報が届きにくい防災行政無線の補完を目指す。そこで、「コミュニティFM活用型」「ケーブルテレビ活用型」「防災行政無線サイマル型」の三つのパターンに分けて、計画に参加する各市町村ごとに検討することにしている。

 この計画の特徴は、ケーブルテレビが発達している長野県の特徴から、ケーブルテレビ会社に大きな役割を期待していることである。例えば、2013年1月公表を目指して「CATV会社の臨時災害放送局開局支援の手引き」を作成する予定であり、ケーブテレビ局がどう市町村の臨時災害放送局の置局を支援していくか、などをこの中に反映する予定である。

 加えて行動計画案の第2章では、「防災・減災に向けたCATVサービスの高度化」としてケーブルテレビ自身の役割について論じている。テレビ端末は、音声だけでは伝えにくい情報を伝えられる伝達手段なので、「災害関連情報をテレビ画面に提供していくことにケーブルテレビ会社は積極的に取り組む」とした。

 例として、アナログの音声ラジオ放送だけでは伝えることが難しい複数の外国語での放送や、耳の不自由な人たちに伝える放送として、非音声のデータ放送が有効になる。例えば長期滞在する外国人の学生や就労者、旅行者が多数いることもあり、地域会社が国際的に開かれた姿に移行していくためにもケーブルテレビサービスとして外国語対応に取り組むとした。

 さらに、デジタル防災行政無線の宅内配備を代替できるかもしれない強力なデジタルメディア放送について総務省が制度検討を進めているので、「ケーブルテレビとしては、自らが災害時の地域情報拠点となるためにこうしたメディアとどう関係していくのかを検討する」とした。

<市町村の宿舎とスタジオ間の情報伝達に公共情報コモンズを活用、クラウド型の無償提供など>
 今回まとめられた計画において、市町村の庁舎と放送会社のスタジオ間の情報伝達手段として利用するのが「公共情報コモンズ」である。

 いわゆるクラウドサービスなどを活用しシステム改修なしに容易にデータ入力が可能になり、コモンズに参加できる。そこで、行動計画の支援事業者は2013年度末まで無償でサービスを提供するとともに、市町村などはその間に防災システムの構築や商用クラウドサービスの利用など方策を検討し、公共情報コモンズの本格運用を準備するとした。

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