「ビッグデータがなければ不可能だった事業が、徐々に実現するようになっている」――。

写真1●「ビッグデータ経営サミット」で講演するリクルートテクノロジーズITソリューション部ビッグデータグループの菊地原拓グループマネジャー
写真1●「ビッグデータ経営サミット」で講演するリクルートテクノロジーズITソリューション部ビッグデータグループの菊地原拓グループマネジャー
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 リクルートグループで「ビッグデータ活用」を担当するリクルートテクノロジーズITソリューション部ビッグデータグループの菊地原拓グループマネジャー(写真1)は、2012年11月29日、東京都内で企業経営におけるビッグデータ活用に関するセミナー「ビッグデータ経営サミット」(主催:日経BP 10万人のIT経営バイブルプロジェクト)の中で講演。「リクルートにおけるビッグデータ活用事例~『宝の山』をサービス向上・創出に生かす~」と題して、自社の取り組みを説明した。

 リクルートグループはビッグデータを組織的に活用する体制を整備している。リクルートホールディングス傘下に分社化された各事業会社から、「事業でデータを活用できないか」というアイデアが持ち込まれる。これに対して、菊地原グループマネジャーが率いるビッグデータグループの担当者が具体策を実行する。直近の半年間で120件のデータ利活用実績があるという。(関連記事:ホットペッパーの分析にHadoop活用 メルマガのクリック率が1.6倍に向上

 菊地原グループマネジャーは、ビッグデータ活用の典型的な事例として、カーセンサー事業で今年始めた「クルマなびカウンター」というサービスを挙げた。中古車を“同一品質同一価格”で販売するというものだ。

“一物一価”の中古車にデータ分析の力で自動値付け

 もともと中古車は、同じ車種でも年数、走行距離や傷の状況などによって“一物一価”になる性質があり、これが流通コストの高騰に直結する。リクルートは、条件が似通った中古車をまとめて一律の保証を付けて、それに見合った値付けをするサービスを始めた。

 このサービス実現のためには、ビッグデータ活用が不可欠だったという。扱う中古車の車種は950車種もあり、台数が膨大で、それぞれ条件も異なる。入力されたデータから適正価格を分析する取り組みは以前からあったが、車種・条件を限定しても、価格分析計算処理に数日かかってしまう。それでも得られるのはあくまで条件付きの価格であって本当に適正とは限らず、ビジネスの現場では使いにくいのが実態だった。

 菊地原グループマネジャーらは、3年前から大規模データ分散処理用のオープンソースのミドルウエアである「Hadoop(ハドゥープ、解説記事)」の社内活用について研究し、ノウハウを蓄積していた。これを中古車情報データベースの分析に適用したところ、わずか1時間半で、全車種の過去の実績や取引実勢、現在の市場価格などを反映した適正価格を割り出せるようになった。この成果が、中古車を新車に近い形の“同一品質同一価格”で販売するという新規ビジネスに直結した。