NECは2012年11月26日、インターネットやモバイル通信網など他のユーザーの通信状態や電波状況などによって通信速度(スループット)が時々刻々と変動するネットワークにおいて、現在時刻より先の未来におけるスループットを高い精度で予測できるソフトウエア技術を開発したと発表した。「3分後までのスループットを約80%の高精度で予測可能なことを実証できた」(同社)としている。

 同社によれば、通信スループットには「安定的に変動する状態」(定常状態)と「不安定に乱高下する状態」(非定常状態)が複雑に混在することを研究によって解明したという。そこで、時系列データの分析手法の一つである「単位根検定」を用いて、現在のスループット状態が「定常か非定常か」を判別。判別した状態に応じて両モデルを混合し、現在から3分先までのスループットの予測モデル(混合モデル)を作成して利用することで、スループットのリアルタイム高精度予測を実現した。

 精度を高めるための工夫として、通信スループットの変動幅の確率分布を求めて予測に活用。これにより、「決められた数値を使用していたため低下していた」(NEC)という同社従来方式による予測精度(予測値の10%以内に収まる確率が50%程度だった)を改善でき、実際にインターネットおよびモバイル通信網(3G/LTE)で収集したスループットのデータを用いてシミュレーションしたところ、3分先までのスループットの変動を約80%の精度で予測できたという。

 NECでは、同技術が純粋なソフトウエア技術であり、「ネットワーク上に新たな通信装置を設置することなく、過去の通信スループットの履歴のみを利用して高精度に予測可能」な点をメリットとして強調。「通信装置を持たないクラウドサービス事業者でも、予測値に応じて即座にデータ通信を制御することで、高品質なクラウドサービスの提供が可能になる」(同社)としている。