写真1●「カシオサイネージ」のデモを披露するカシオ計算機の樫尾和雄代表取締役社長
写真1●「カシオサイネージ」のデモを披露するカシオ計算機の樫尾和雄代表取締役社長
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写真2●カシオサイネージを側面から見た様子。任意の形状にカットしたスクリーンに映像を投影する
写真2●カシオサイネージを側面から見た様子。任意の形状にカットしたスクリーンに映像を投影する
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写真3●カシオサイネージ前面に埋め込まれたNFCタグにスマートフォンをかざしてクーポンを取得する様子
写真3●カシオサイネージ前面に埋め込まれたNFCタグにスマートフォンをかざしてクーポンを取得する様子
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 カシオ計算機は2012年11月26日、デジタルサイネージ事業への新規参入を発表した。独自のプロジェクター用半導体光源技術を応用した卓上式の「カシオサイネージ」を2013年1月から日米英3カ国で発売。その後、他国にも展開する。価格は初期設定サービス込みで100万円程度。初年度(2013年3月までの3カ月間)に2000台、次年度1年間に2万台の販売を計画する。

 樫尾和雄代表取締役社長(写真1)は、「新開発のプロジェクター用光源を何か新しい事業につなげられないか、ずっと考えてきた。その中で、長寿命の光源と当社が持つ小型化技術を生かせば、新しい形のデジタルサイネージが作れるという考えに行き着いた」と、開発の経緯を説明した。

 カシオは2年前に世界で初めて、プロジェクター用レーザー&LED光源の開発に成功した。従来型光源(水銀ランプなど)の寿命が2000~3000時間であるのに対し、新型光源は2万時間程度の寿命がある。ただし、一般的なオフィスや学校などでの利用ではこれほどの長寿命は不要。長寿命という特性を生かすことができる新たな用途を模索する中で、デジタルサイネージに行き着いたという。

 カシオサイネージの本体は、幅約470mm×奥行き535mm×高さ195mm。この前面に高さ最大573mmのスクリーンを付けて映像を投影する。「もっと大型のデジタルサイネージも検討したが、店の入り口やカウンターに簡単に設置できるサイズの方が大きな市場を狙えると判断した。小型化のためのレンズ機構などに独自性があり、他社はすぐに同じものを作れないだろう」と樫尾社長は強調した。

コンテンツ・クラウドサービス込みで販売

 デジタルサイネージ分野には多数の先行製品がある。「何かカシオらしい新たな提案ができないかと考えた。既存のデジタルサイネージはすぐに飽きが来る。キャラクターや音声をいつでも追加・変更できることで既存製品にはない価値が出せると考えた」と樫尾社長は説明した。

 一般にデジタルサイネージでは映像・音声コンテンツの制作費がかさみがち。カシオサイネージはコンテンツ制作などのサービス込みで提供する点が特徴だ。映像を映し出すスクリーンは顧客の要望に応じた任意の形状のものをカシオの工場でカットして提供する(写真2)。映像・音声コンテンツも顧客から提供された素材を基にカシオが制作する。スクリーンでは人間やキャラクターがしゃべる様子を再現できる。SDカードに収納するので、後で差し替えることも可能だ。

 スクリーン下部には4つのタッチボタンがあり、4種類のコンテンツを切り替えられる。設定次第で、店内の4つの売り場の紹介に使ったり、4つの言語を切り替えて音声アナウンスしたりすることができる。標準対応言語(日本語、英語、中国語、韓国語など)については、顧客はテキストを用意するだけで音声合成で自動的にしゃべらせることができ、吹き込み作業などは不要である。

 カシオサイネージの提供と並行して、販促支援用のクラウドサービスの提供も予定している。詳細は検討中だが、第一弾として、NFC(Near Field Communication=近距離無線通信)を使ったサービスを計画。カシオサイネージの前面にはNFCタグが埋め込まれており、NFC機能に対応したスマートフォンをかざすと、その店舗に合った割引クーポンなどを配信する(写真3)。

 1988年の社長就任以来、在任24年になる樫尾社長はカシオサイネージのデモンストレーションを自ら行い、報道陣の質問にもほぼ1人で答えた。「これは“新製品”というより“新規事業”だ。端末を生かして新しい事業を起こしていくという、これまでの電機メーカーの事業とは異なる新たな取り組みだ。デジタルサイネージ以外にもいくつか、同様の考え方で新規事業の展開を考えている」と話し、新規事業への強い意欲を示した。