図1●実証実験の概要(NTTドコモの資料から抜粋)
図1●実証実験の概要(NTTドコモの資料から抜粋)
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 NTTドコモは2012年11月22日、大規模災害時の通信混雑を緩和する新技術の実証実験を来年1月に始めると発表した。総務省から「大規模災害時における移動通信ネットワーク動的制御技術の研究開発」として受託したプロジェクトで、東北大学、NEC、日立東日本ソリューションズ、富士通と共同で実施し、来年3月末までに報告をまとめる。

 実験では、大規模災害による通信混雑時に、安否確認で最も使われる音声通話とメールを優先処理できるようにする(図1)。無線基地局(eNodeB)上で端末から届いた通信の中身を確認し、音声・メールの場合はIPヘッダーのTOS(Type Of Service)フィールドにフラグを立てる。コア網ではフラグの付いた音声とメールをキューイングせずに高速伝送する。動画などフラグのない通信は音声やメールの通信が途切れるまで待たされることになる。

 ただ、常に上記の運用とするわけではなく、NECのOpenFlowコントローラとスイッチを使い、災害時だけに切り替えることを想定する。実現には音声のIP化(Voice over LTE)も前提となり、NTTドコモは「商用ネットワークへの導入は未定」としている。

 大規模災害時に音声とメールの通信を優先処理しても、サーバーの処理能力が不足すれば結局は滞ってしまう。そこで仮想化の仕組みを使い、リソースを柔軟に調整できるようにする実験も実施する。例えば障害時は一部のサーバーの動画処理機能を止め、代わりに音声処理やメール処理のサーバーとして使う。従来はソフトとハードが一体でこのような運用はできなかったが、仮想化で機能を分離して柔軟性を高める。

 各社は同日、東北大学の研究施設で実験設備の構築を終えた。来年1月から横須賀リサーチパーク内の研究施設とともに実験を始める。実験では大規模災害を想定した通信混雑状況を擬似的に作り、上記の仕組みなどがうまく動作するかどうかを検証する。