デジタルアーツは2012年11月20日、都内で記者発表会を開催し、取引先など外部に電子メールで送信した添付ファイルを、送信後にいつでも遠隔削除可能にする仕組みを備えたメールフィルタリングソフト「m-FILTER Ver.3.5」を発表した。21日から出荷を開始している。

 m-FILTERは、電子メールの送受信を制御する「m-FILTER MailFilter」と電子メールの全文保存および検索を実現する「m-FILTER Archive」、迷惑メール対策機能を提供する「m-FILTER Anti-Spam」という三つのソフトウエアで構成される。

写真1●デジタルアーツの道具登志夫社長
写真1●デジタルアーツの道具登志夫社長
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 目玉となる送信済み添付ファイルに対する遠隔制御は、m-FILTER MailFilterに、有償のオプションとして、同社が7月に発売したファイル追跡サービス「FinalCode」の簡易版(FinalCode Express)を組み合わせることで実現している。これにより、「添付ファイルを魔法のように消せる」(デジタルアーツの道具登志夫社長、写真1)といい、「同様な仕組みを備えた競合製品は国内には存在せず、おそらく世界でも初」であると同社では主張している。

専用クライアントとクラウドサービスの連携で実現

 m-FILTER Ver.3.5を使った送信済み添付ファイル制御の仕組みは、以下のようになる。まず、ユーザーが添付ファイル付きのメールを送信しようとすると、あらかじめ決めたポリシーに基づいてm-FILTERが添付ファイルを暗号化。暗号化した添付ファイルと一緒に「専用ビューア」のインストールを促すメールを宛先ユーザーに送る。同時に、m-FILTERは同社のクラウドサービス「FinalCode CLOUD」に対して、添付ファイルの操作権限に関する情報を登録する。

 メール受信者は、案内に従ってFinalCode CLOUDにアクセスし、専用ビューアソフト(同社ではビュワーソフトと表記)をインストールする(初回のみ必要)。この専用ビューアは「ビューア」と名付けられているものの、いわゆるビューア機能は持たない。実際にデータファイルを開くのは、拡張子に関連付けられたアプリケーションであり、専用ビューアは(1)クラウド上のファイル利用権限情報をチェックする、(2)暗号化を解いてアプリにデータを渡す、(3)クリップボードの利用などOSやアプリの動作を制御する---といった役割を果たすクライアントソフト(エージェント)である。

 専用ビューアがないと暗号化を解いてファイルを開くことができないため、仮に添付ファイルが誤操作や不正コピーなどで流出しても、他のユーザーに読まれる心配はない。また、専用ビューアはユーザーごとに固有の情報(メールアドレスなど)が埋め込まれた状態でインストールされるため、他のユーザーがパソコンにビューアをインストールしていても、許可されていない限りファイルは開けない。

 添付ファイルそのものの転送ではなく、別の手段による情報漏洩もブロックできる。専用ビューアは、OSにフックする形で画面キャプチャやクリップボードの利用(コピーなど)などの操作を制御できるようになっており、受信者は、送信者が認めていなければ「別名で保存し直す」「印刷して配る」「重要なところだけコピーしてメールに貼り付けて送る」といった操作を実行できない。

 価格は、m-FILTER MailFilterのライセンス価格が「30ライセンスで40万4000円」から。これに保守料金(30ライセンスの場合で6万1000円から)が契約年数分だけかかる。オプションのFinalCode Expressについては「30ライセンスで年額17万3700円から」となっている。合計すると「30ライセンスで年額63万8700円から」という価格になる(以上、価格はすべて税別表記)。