写真●日印IFRSダイアローグ2012に関する記者会見の様子
写真●日印IFRSダイアローグ2012に関する記者会見の様子
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 日本とインドの関係者がIFRS(国際会計基準)導入上の課題を議論する「日印IFRSダイアローグ」が2012年11月19日、東京で開催された。記者会見でインド勅許会計士協会(ICAI)バストプレジデントのアマリジット・チョプラ氏(写真右から3人め)は「インドはIFRSの採用について、米国の動向を一切気にしていない。(IFRSの設定主体である)IASB(国際会計基準審議会)にのみ目を向けている」と強調した。

 日印ダイアローグは日本から金融庁や財務会計基準機構(FASF)、日本公認会計士協会、経団連、東京証券取引所など、インドから企業省やICAI、証券取引委員会、会計検査院、中央銀行などが参加。「IFRSを採用する際に日本とインドが直面する課題について情報を共有し、両国でIFRS適用に関するプラットフォームを築き、IASBに意見発信していくことを狙った」(FASF理事でIFRS財団評議員の島崎憲明氏、写真左から3人め)。2010年7月に東京で第1回を、2011年8月にバンガロールで第2回を開催。今回が第3回となる。

 2011年以降、両国ともIFRS採用の状況が大きく変わった。日本では金融担当大臣発言を機に、IFRS適用方針を見直し。現在も審議中で、結論は出ていない。インドはIFRSの一部をカーブアウト(適用除外)したうえで、インド会計基準とIFRSをコンバージェンスする方針を打ち出している。当初は上場企業の一部に対して、2011年4月からコンバージェンスした基準(Ind-AS)を適用する予定だったが、税法との調整の遅れなどにより適用を延期。現在も適用時期を明らかにしていない。

 この状況について、チョプラ氏は「法制面および税制面での課題は解決している」と話す。「法人税については、新たにIFRSに対応した『TAS(タックス・アカウンティング・スタンダード)』の公開草案を出し、コメントを受けている。この作業が完了すれば、法人税に関する問題は解決できる」(チョプラ氏)。

 IFRSの導入時期に関して、チョプラ氏は「この業界は不確実であり、いつということは明言できない」としながら、「我々公認会計士協会としては、できるだけ早く導入したい」と語った。さらにインド企業省大臣が「2013年4月にIFRSを導入すべき」と発言したことに触れ、「我々はすでに用意ができている。あとは産業界と政府だ」(同)とした。

 今回の日印IFRSダイアローグでは、IASBのアジェンダ協議に対する要望、2012年10月に開設したIFRS財団アジア・オセアニア・オフィス(関連記事:IFRS財団 東京サテライトオフィスが始動、「IFRS普及の重要な一里塚となる」)の活用方法、のれんや開発費の計上に関する問題などについて議論した。両国によるダイアローグは今回で終了し、以後はアジア・オセアニア会計基準設定主体グループ(AOSSG)での議論に発展させていく。ただし、島崎氏は「両国による議論は有用であり、今後も継承していくことを両国で確認している」と語った。