写真1●楽天証券 執行役員CIO 情報システム本部長の平山忍氏
写真1●楽天証券 執行役員CIO 情報システム本部長の平山忍氏
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写真2●システム障害頻度の推移
写真2●システム障害頻度の推移
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写真3●現行のシステムアーキテクチャ
写真3●現行のシステムアーキテクチャ
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写真4●障害を減らせるシステムアーキテクチャの方向性
写真4●障害を減らせるシステムアーキテクチャの方向性
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 楽天証券 執行役員CIO 情報システム本部長の平山忍氏は2012年11月16日、東京都内で開かれた「itSMF Japan」コンファレンス(主催:itSMF Japan、共催:日経コンピュータ)で、「システム障害ゼロを目指して―さらなる安定運用のためのアーキテクチャと態勢」と題する基調講演を行った(写真1)。

 楽天証券ではかつて、システム障害が頻発する時期が周期的に訪れていたという(写真2)。同社がこの障害頻度データを分析したところ、「ライブドア・ショック」のような株式市場の市況悪化で業績が落ち込んだ後に、障害の頻度が高まる傾向にあることが分かった。業績悪化でシステム経費が引き下げられ、そのしわよせが障害対策に回ってしまった形だ。

 「市況産業であるネット証券業界では、業績に応じてシステム経費が変動するのは避けられない」(平山執行役員CIO)。このため楽天証券は、経費削減のしわよせが障害対応へ行かないよう工夫した。まず、障害対応の経費と他の経費を分離。新規開発の案件ごとに障害対策費を予算計上し、必ず実行するようにした。障害対応の改善点はスコア化し、KPIとして常にチェックできるようにしたという。

 こうした障害を減らすための制度設計には一定のメドが付いたとして、楽天証券は「障害への対応を“守り”から“攻め”へ転換する」(平山執行役員CIO)考えだ。システムアーキテクチャ自体を変えることで、障害の絶対量を減らすという。

 これまでのシステムアーキテクチャでは、単一の基幹データベース(DB)が中心にあり、これが取引所システム、利用者との接点であるユーザーインタフェース(UI)システム、QUICKやロイターといった外部の市場情報システムからのデータ送受信をすべて担っていた(写真3)。

 平山氏は、このDBの構造をより簡素化した上で、各インタフェースを標準化する考えだ。具体的には、これまでのDBシステムの構成を、注文処理、出来処理、約定処理の三つに分け、それぞれの処理内容に見合ったシステムを構築する(写真4)。UIシステムとデータを入出力するのは注文処理システム、取引所システムとの入出力は約定処理システムと、それぞれデータの送受信先を明確に切り分ける。市場情報システムからの情報は、基幹DBシステムを介さず、UIシステムがリアルタイムに受信できるようにするという。