写真1●三菱総合研究所の小宮山宏理事長
写真1●三菱総合研究所の小宮山宏理事長
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写真2●主要国の国民一人当たりのGDP(国内総生産)を世界全体の一人当たりのGDPで割った値のグラフ
写真2●主要国の国民一人当たりのGDP(国内総生産)を世界全体の一人当たりのGDPで割った値のグラフ
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 「先進国で物質的需要が飽和するなど、様々な課題が表面化している21世紀の世界において、日本はそれらの課題を解決するロールモデルを提供できる立場にある」---。こう語るのは、三菱総合研究所の小宮山宏理事長(前東京大学総長)である(写真1)。2012年11月15日と16日の2日間、都内で開催された「第9回 itSMF Japanコンファレンス」の特別講演でのひとコマだ。

 『日本「再創造」~鍵はICTと知の構造化~』と題された同講演において小宮山理事長は、「世界と日本が21世紀の今どういう状況にあり、日本はこの先どういうビジョンで進めばいいか」というテーマについて、各種データを引用しながら明快な切り口で、同氏が提唱している「プラチナ社会」(後述)という概念をはじめとする持論を展開した。

 まず小宮山理事長は、「主要国の国民一人当たりのGDP(国内総生産)を世界全体の一人当たりのGDPで割った値」が歴史上どのように変化してきたかを示すグラフ(写真2)を紹介。「1000年ほど前を見ると、どの国もほぼ同じだったことが分かる。生産活動がほぼ食べるための活動、すなわち1万~2万年前に始まった農業だったからだ。ところが、300年ほど前に産業革命、すなわち工業革命が起こると、工業を手に入れた先進国とそうでない発展途上国にハッキリと分かれるようになった」。

 「長らく続いた産業革命後の時代では、工業を手にできなかったほとんどの国は乗り遅れてずっと途上国のままだった。ところがここ10年ほどを見ると、先進国と途上国の差が急激に小さくなってきている。これは先進国が落ちたのではなく、途上国が相対的に伸びて豊かになってきているからだ。今後世界は、かつての農業主体の時代ほどではないかもしれないが、今よりはるかに国家間に差がない時代になっていくだろう」。