写真1●「itSMF Japanコンファレンス」で講演する宇宙航空研究開発機構(JAXA)の川口淳一郎宇宙科学研究所シニアフェロー教授
写真1●「itSMF Japanコンファレンス」で講演する宇宙航空研究開発機構(JAXA)の川口淳一郎宇宙科学研究所シニアフェロー教授
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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の川口淳一郎宇宙科学研究所シニアフェロー教授(写真1)は2012年11月15日、東京都内で開かれた「itSMF Japanコンファレンス」(主催:itSMF Japan、共催:日経コンピュータ)で、「『はやぶさ』が挑んだ人類はじめての往復の宇宙飛行、その7年間の飛行のあゆみ」と題する特別講演を行った。

 川口教授は、2010年6月に約7年間の宇宙飛行を経て地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ(MUSES-C)」の「プロジェクトマネージャー」を務めた(関連記事:「はやぶさ」の成果とは何なのか?)。現在、2014年打ち上げ予定の「はやぶさ2」プロジェクトが進行中だが、川口教授は実務の第一線からは退き、主に後進の指導に当たっている(関連記事:達人が語る、リーダーの心得 )。

 特別講演の聴講者は主にシステムエンジニアやプロジェクトリーダーなど、ITシステムの構築・運用に携わる人たちだった。川口教授はそれを念頭に置いて、ITのプロジェクトマネジメントにも通じるはやぶさプロジェクトの経緯を話した。

「“不幸”を早く知っても無意味」

写真2●小惑星探査機「はやぶさ(MUSES-C)」。4基のイオンエンジンを搭載(写真提供:JAXA)
写真2●小惑星探査機「はやぶさ(MUSES-C)」。4基のイオンエンジンを搭載(写真提供:JAXA)
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 はやぶさ探査機(写真2)は、小惑星の近くに達した時に小惑星に向けて弾丸を発射し、その衝撃で舞い上がった物質サンプルを回収する計画だった。

 はやぶさ探査機の設計段階では、サンプル回収の成否を把握するためのセンサーを搭載するべきだという強い意見があった。センサーを付ければ、サンプル回収状況を早期に把握できる利点がある一方で、その分重量が増す欠点もある。

 川口教授は「小惑星に当てる弾丸は、3発しか積めない。3発でダメならダメ。センサーを搭載しても、サンプル回収に失敗したという“不幸”が早く分かるだけだ」として、センサー搭載案を却下した。結果的には、地球帰還後に実際にサンプル回収ができていたことが分かり、分析が進められた。