写真1●島根富士通 本社工場
写真1●島根富士通 本社工場
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 富士通は2012年11月13日、島根県出雲市の島根富士通においてノートPCやタブレット端末の生産設備を報道関係者向けに公開した(写真1)。

 富士通は国内メーカーとしては珍しく、ノートPCの多くを国内で生産している。島根富士通はその生産拠点のひとつで、2011年度のPC生産台数は200万台となっている。10月19日に発表した最新の防水Windows 8タブレット「ARROWS Tab Wi-Fi QH55/J」(関連記事:富士通がタブレットやUltrabookなどWindows 8対応製品を発表)も、島根富士通にて生産している。

国内で一貫して生産する「スーパーバリューチェーン」が強み

写真2●富士通ユビキタスビジネス戦略本部兼パーソナルビジネス本部本部長の齋藤邦彰氏
写真2●富士通ユビキタスビジネス戦略本部兼パーソナルビジネス本部本部長の齋藤邦彰氏
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 工場見学に先立って、富士通ユビキタスビジネス戦略本部兼パーソナルビジネス本部本部長の齋藤邦彰氏が、同社のPC事業の最新状況を説明した(写真2)。

 齋藤氏は、現在のPC市場についてグローバルではアジア太平洋地域や新興国を中心に台数が伸びており、全体の平均単価は下落していると分析。端末バリエーションとしてタブレットやスマートフォンが登場しており、これらの端末間のシームレスな利用がトレンドであるという。

 齋藤氏によれば、これまでの富士通のPC事業では、PCを「何でもできるデバイス」と位置付けていた。しかしこれからは「何ができるか」をはっきり訴求することが必要と考えており、「『もの』から『こと』へ」の移行を打ち出したとのことだ。

写真3●「もの」だけでなく、何ができるかをMy Cloudで提供する
写真3●「もの」だけでなく、何ができるかをMy Cloudで提供する
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 実際に個人ユーザーが触れるUltrabookやタブレットは、富士通の製品ポートフォリオにおける「フロントエンド」に相当する。さらに富士通はネットワーク・ミドルウエア・バックエンドといったフルスタックの製品群を保有している。これらが「こと」を提供する上での富士通の強みであり、その成果のひとつがMy Cloudであるという(写真3)。

 一方、富士通は「もの」を軽視しているわけではなく、むしろMade in Japanのものづくりにこだわっている。特にHDD搭載で世界最薄のUltrabook「LIFEBOOK UHシリーズ」について、「これを中国で作ることは絶対に無理」(齋藤氏)と断言するほど、日本の技術を集約した製品になっているという。また、防水タブレットのQH55/Jや分離型のStylistic QH77/Jについても、「R&Dから製造まで国内で一貫して行っているからこそ、早い時期に投入できた」(齋藤氏)として、開発スピードの点でもメリットを挙げた。

 島根について、齋藤氏は「中国との戦いの最前線」と位置付けており、常に中国との競争を意識している点を強調した。中国と比較した国内生産の強みとして、川崎で開発を、島根・福島・兵庫・横浜で製造を、仙台・新潟・北九州・京浜でサポートを行う国内一貫体制を挙げ、富士通はこれを「スーパーバリューチェーン」と呼んでいる(写真4)。

 富士通アイソテックによる福島での生産については、2011年の東日本大震災において事前に策定したBCP(事業継続計画)に従って、わずか7日で代替製造ラインを完成させたという。これにより福島で生産していたデスクトップPCを島根で生産できた。このような代替製造の試みは現在でも相互に行っており、リスクを分散しているとのことだ(写真5)。

 齋藤氏は「今後も富士通はMade in Japanにこだわっていく」として、富士通のPC事業における国内生産の優位性を改めて強調した。

写真4●国内で一貫して生産するスーパーバリューチェーン
写真4●国内で一貫して生産するスーパーバリューチェーン
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写真5●代替製造(BCP)によるリスク分散
写真5●代替製造(BCP)によるリスク分散
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