写真●日立WANアクセラレータにおけるリモートバックアップモデルの外観
写真●日立WANアクセラレータにおけるリモートバックアップモデルの外観
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 日立製作所は2012年11月15日、長距離の拠点間に適したWAN高速化装置「日立WANアクセラレータ」のラインアップを強化し、単一のセッションで大量データをより高速で転送可能にした「リモートバックアップモデル」(写真)を発表した。11月19日に販売を開始し、2013年2月20日から出荷する。

 既存モデル「ハイエンドモデル」(搭載できるスロット数の違いによって、2スロット、4スロット、8スロットの3種類)に対して、今回、リモートバックアップモデルを追加した。ハイエンドモデルは、最低1枚のインタフェースモジュール(1000BASE-Tなど)のほかに、WAN高速化モジュール(1枚で1Gビット/秒)を装着して総スループットを拡大するやり方を採用していた。

 今回のリモートバックアップモデルでは、スロットによりWAN高速化モジュールを拡張するという従来の方法を変更。WAN高速化モジュールに相当する機能は、外付けの専用PCサーバー機に担わせることにした。この狙いは、通信速度の性能向上である。WAN高速化モジュールを使ったやり方では、一つのTCPセッション当たりの転送速度が300Mビット/秒に限られるという。

 今回採用した、専用PCサーバー機を使ったWAN高速化では、スループット自体はWAN高速化モジュール1枚と同じ(1Gビット/秒)だが、一つのTCPセッションでスループット上限の1Gビット/秒を利用できるという。これにより、単一のセッションで大量データを一度に転送するリモートバックアップ用途で、効率良くデータを転送できるようになる。

独自技術でTCPの弱点を補強

 なお、前提となる日立WANアクセラレータとは、TCP通信の弱点を補強する独自技術によって、長距離通信時にも高速通信できるようにしたWAN高速化装置である。海外拠点と通信する場合など、往復遅延が大きいケースで特に効果が大きい。海外拠点を持つグローバル企業などに向く。拠点ごとに対向する形で設置する。

 独自技術の一つは、通信先からの送達確認を待たずに次のTCPパケットを送信する技術である。これにより、長距離通信における往復遅延の影響がなくなる。長距離になればなるほど(往復遅延時間が長くなればなるほど)、一般のTCPと比べて相対的に高速化する。

 もう一つの技術は、応答パケットがきちんと戻っているかどうか、パケット廃棄率の変化を測定し、これに応じてデータ送信レートを動的に制御するというもの。これにより、パケットの廃棄によるデータの転送性能の低下(パケットの再送が必要になってしまうための低下)を抑える。パケット廃棄率を0に保ちながら、限られた帯域を最大限使い切るように、データ送信レートを可能な限り引き上げる。

 新モデルと既存モデルの価格(税込み)は、以下の通り。

 (1)リモートバックアップモデル(スループット1Gビット/秒、TCPセッション当たり1Gビット/秒、最大2000 TCPセッション)は、4305万円。

 (2)ハイエンドモデルの2スロット(スループット1Gビット/秒、TCPセッション当たり300Mビット/秒、最大6000 TCPセッション)は、4305万円。

 (3)ハイエンドモデルの4スロット(スループット3Gビット/秒、TCPセッション当たり300Mビット/秒、最大1万8000 TCPセッション)は、4725万円から。

 (4)ハイエンドモデルの8スロット(スループット7Gビット/秒、TCPセッション当たり300Mビット/秒、最大4万2000 TCPセッション)は、5040万円から。