写真●日産自動車の行徳セルソ執行役員・CIO
写真●日産自動車の行徳セルソ執行役員・CIO
[画像のクリックで拡大表示]

 日産自動車の行徳セルソ執行役員・CIO(最高情報責任者)は2012年11月15日、都内で開かれた「第9回itSMF Japanコンファレンス」(主催:特定非営利活動法人itSMF JAPAN、共催:日経コンピュータ)で、「日産自動車のグローバルビジネスを支える新IT戦略」と題して講演した(写真)。

 行徳CIOは、日産自動車が堅実に成長する背景には常に中期計画の作成と達成があると指摘し、現在取り組む「パワー88」について触れた。これは2016年度までに世界シェアを8%、営業利益率を8%まで高めるもの(現在はそれぞれ約6%)。そして、このパワー88をITシステムから支えるために作成した「VITESSE」(ヴィテッセ=仏語で速さ=)について説明した。このプロジェクトは日産の大株主であり、戦略パートナーである仏ルノーとの共同プロジェクト。ITでコスト削減から開発効率の向上、ディーラー管理、顧客満足などに取り組み、「ビジネスプロセスを変えて、利益増に貢献する」とした。

 日産自動車では、すでに電気自動車「リーフ」について、バッテリーの使用動向などをITシステムで管理するプロジェクトを進めている。行徳CIOは製品の生産から使用まで幅広く効率把握を行うことで、次の設計や生産などに生かしていく考えを明らかにした。

 パワー88においては、特に新興国での成長に重きを置いている。そのために車種別の採算管理を徹底したり、そこから開発・調達の最適地を選ぶことに役立てたりと、日本やフランスに限らず世界同一で情報共有をできる先端システムを確立する方針だ。

 アジア諸国でのITスタッフを増やすためには「タレントマネジメント」に取り組み、外注する仕事と日産自体が手がける仕事を綿密に分ける。その上で、体系化した人材教育を進めるとしている。

 行徳CIOは「カルロス・ゴーン社長はITについて、常に『シンプルで、スピードを持ち、標準化が大切』と話している。それを実践する」と語る。関係する役員にITシステムについて満足度を聞いたり、取引先にITの取り組みに関する年次報告書を発行したりして、外部の声も聞きながら先端システムを確立するという。