富士通は2012年11月13日、同社でノートパソコンを製造している島根富士通の工場を公開した。Windows 8の登場や薄型パソコンが増えたことにより、作業工程の複雑化が進んでいる。その中でも従来と同様の製造スピードと品質を維持するために、同社は開発から製造までを一貫して日本国内で手がける「メード・イン・ジャパン」体制を維持すると説明。製造ロボットの活用など効率化を進めていくことで、製造コストでも中国など海外の工場に対抗できるとの見通しを示した。

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 富士通が以前、取り引きしていた中国のODM(パソコンなどの委託製造業者)工場では、1ラインに120人を投入していた。それに対し、島根富士通では16人――。島根富士通の宇佐美隆一社長は、日本でパソコンを製造する優位性を示す指標として、こんな数値を示した。「中国の工場は離職率が高く、人が頻繁に入れ替わる。今日来ていた人が明日は来なくなる。だから単純作業しか任せられない。一人ひとりがネジ1本、部品1つを付ける。単機能の作業をするために120人が並んでいる」(宇佐美社長)と背景を説明する。

島根富士通の宇佐美隆一社長
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 島根富士通では実際の組立作業に10人、検査や梱包のほか作業のサポートに6人があたる。作業員一人が複数の組み立て作業を手早くこなし、1ラインにつき60~70秒に1台のペースでパソコンを製造する。今後は、無線LANのアンテナの引き回しが必要のない設計にする、ステッカーで貼りつけていた内容をレーザーで刻印する、作業のロボット化を進めるといった工夫を加えることで50秒に1台のペースを目指すという。

 タッチ機能を加えたWindows 8が登場したこともあり、パソコンの多様性が広がっている。同社は、14型液晶を搭載しながら厚さを15.6mmに抑えた「LIFEBOOK UH75」シリーズ、Windows 8を搭載して9.9mmと薄型の防水タブレット「ARROWS Tab Wi-Fi QH55/J」、女性向けの外観デザインとした「Floral Kiss」といった特徴ある製品を投入してきた。「従来はCPUやハードディスクといった機能を強化してご自由にお使いくださいというアプローチだった。最近はパソコンで何ができるか、という点にフォーカスした商品を作っている」(富士通ユビキタスビジネス戦略本部兼パーソナルビジネス本部執行役員本部長の齋藤邦彰氏)という方針を具体化した。

富士通ユビキタスビジネス戦略本部兼パーソナルビジネス本部執行役員本部長の齋藤邦彰氏
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 特徴ある製品を効率良く開発し、ユーザーの元に届けるには、開発や製造からサポートまで国内一貫体制が不可欠だと説明する。「工場が日本にあるからこそできることを磨いて世界に発信する。世界初をどんどん出してパーソナルコンピューティングを進化させる」(齋藤氏)と意気込みを見せた。

工場内では、マザーボードも製造している。この機械は微細な部品をボード上に取り付ける「高速マウンター」
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高温でマザーボードを温めてハンダを溶かして部品を固定させる「リフロー炉」(右奥)とカメラでハンダ付けの状態をチェックする「自動外観検査機」(左)
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マザーボードの動作に問題がないかを最終チェックする。この作業は今後ロボット化によって効率を高めていくという
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組み立てラインの前には、マザーボードやハードディスクなどパソコンの部品を集めたラックが並ぶ
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これが組み立てライン。ベルトコンベアーで流れる本体に10人の作業員が部品を取り付けていく
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製品を箱に入れて、作業完了となる。60秒~70秒に1台のペースで製品が次々と作られていく
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