写真1●2012年4~9月期連結決算を説明する日本通信の三田聖二社長
写真1●2012年4~9月期連結決算を説明する日本通信の三田聖二社長
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写真2●今夏以降、メーカーとの商談が増加しているという
写真2●今夏以降、メーカーとの商談が増加しているという
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写真3●9月末時点のSIMのアクティブ数は微増の24万4950件
写真3●9月末時点のSIMのアクティブ数は微増の24万4950件
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 日本通信は2012年11月12日、2012年4~9月期連結決算を発表した。売上高は前年同期比2.2%増の18億9100万円、営業利益は同3.2%減の1億5100万円の増収減益だった。同時に通期業績予想を下方修正した。前年度比では増収増益を確保するものの、売上高52億円、営業利益10億4000万円としていた従来予想を、売上高42億5000万円、営業利益5億5000万円に引き下げた。

 11月13日に開催した決算説明会に登壇した三田聖二社長(写真1)は下方修正の理由を、「メーカー商談が本格化してきたため」と説明した。今夏以降、国内外のスマートフォンメーカーやカメラメーカー、企業向けIP電話の最大手などから、SIMを活用したサービスやソリューションに関する商談が増加しているという(写真2)。年度当初はイオンやヨドバシカメラのような大手販売パートナーの開拓によるSIM製品の拡販を想定していたが、同社の人的資源は限られる。販売パートナーの開拓よりも端末メーカーのサービスやソリューションを支援して市場を切り拓く方が中長期的に得策と判断した。

 市場開拓としては、例えばスマートフォンで企業の内線/外線を実現するソリューションの提供を検討している。「無線専用線」と呼ぶ同社の特許技術を用いてスマートフォンの通信を企業の社内ネットワークに直結することで「VPN接続が不要で安全性の高い内線/外線ソリューションを安価に提供できる」(福田尚久副社長CFO)という。同様にM2M(Machine-to-Machine)市場の開拓も狙っており、米国子会社ではスプリント・ネクステルの携帯電話網を借りて銀行ATM(自動現金預け払い機)や健康キオスク端末を無線接続するソリューションを展開して実績を積み上げている。

携帯電話会社から通信を切り離す

 従来の携帯電話事業者を中心とした端末販売モデルだけでなく、最近は端末メーカーが自身で販売に乗り出す例も増えている。例えばNECカシオモバイルコミュニケーションズが9月からイオンの一部店舗で防水・薄型のスマートフォン「MEDIAS NEC-102」の販売を始めたほか、レノボ・ジャパンもヨドバシカメラと組んで3G通信機能を備えたタブレット端末を独自展開しているという。三田社長は「携帯電話会社から通信を切り離し、流通大手や端末メーカーが自由に組み込んで独自ブランドで販売できる世界の実現を目指す」と意気込む。

 ただ販売パートナーの開拓と違い、端末メーカーのサービスやソリューションの支援はSIM製品の拡販に即座につながるわけではない。例えばカメラに通信機能を組み込む場合は撮影画像の送信枚数単位で課金するなど、「今までにないものを作り出すとなれば個別対応が必要で時間もコスト(先行投資)もかかる」。このため、売上高・営業利益ともに大幅に下方修正する結果となった。

 7~9月期のSIM製品の出荷数は5万2727枚。四半期当たりの出荷数は過去最高を記録したが、他社との競争も激しくなっており、9月末時点のSIM製品のアクティブ数は微増の24万4950件にとどまった(写真3)。このため、イオンSIMの通信速度を100kビット/秒から150kビット/秒に高速化するなどして解約防止に取り組んでいるという。