日本民間放送連盟(民放連)は2012年11月6日、「第60回民間放送全国大会」を開催した。午前中にはテレビやラジオをテーマにしたシンポジウムが、午後からは大会式典などがそれぞれ開催された。

 「テレビの未来を探る~通信・放送の連携」をテーマにしたシンポジウムでは、通信・放送連携サービスでいかにマネタイズを実現するかが論点の一つになった。日本テレビ放送網のメディア戦略局メディア戦略部担当部長の佐野徹氏は、「ユーザーを多く集めないと利益は確保できない」「有料会員になると動画を快適に視聴できるようにするというようなサービスを提供するniconicoの取り組みを見て、勉強させてもらっている」と述べた。ニワンゴの代表取締役社長を務める杉本誠司氏は、「このタイミングで広告を見てほしい、という我々の思いとは別に、ユーザーの財布の紐が緩むタイミングがある。ユーザーの心理を注意深く見る必要がある」とした。

 プレゼントキャストの代表取締役社長の須賀久彌氏は、動画配信サービスなどのインターネット系サービスがテレビの媒体価値に及ぼす影響について述べた。同社はオリンピックの時期に民放事業者から委託を受ける形で、動画配信サイト「gorin.jp」を運営している。「4年前の北京五輪の時にはgorin.jpで五輪競技のハイライト映像を流すと放送を見てもらえなくなるのではないか、という意見があった。実際にやってみると、開会式を見逃してgorin.jpでハイライト映像を見た人がオリンピックモードになって放送番組を視聴するようになるということが起こった」という。

 毎日放送の経営戦略室マネージャーである齊藤浩史氏は、在阪局などが参加する「マルチスクリーン型放送研究会」の取り組みについて報告した。さらに民放事業者のビジネスモデルについて、「マルチスクリーンなど通信・放送連携サービスを具体化させる際には、SNSとの連携などコンテンツレイヤーでの議論に併せて、こうしたサービスによってテレビビジネスを支える共通基盤である広告収入の新領域をどう増やしていくかについての議論も進めていくべきではないか」と述べた。

 午後からの大会式典では、日本民間放送連盟(民放連)の会長である井上弘氏(TBSテレビ代表取締役会長)が挨拶の中で、民放の現状や課題について述べた。「スマートテレビや4K映像など技術の進歩や端末の多様化が進んでいるが、放送の本質は番組を送り届けること。今後も視聴者や広告主に満足してもらえる番組を作り続ける」「様々な課題があるが着実に前進していく」などとした。

■変更履歴
4段落3行目からの毎日放送の齊藤浩史氏のコメントを追記しました。本文は修正済みです。 [2012/11/08 18:22]