デジタルマーケティングのコンサルティングを手がけるルグランの泉浩人代表取締役は2012年10月31日、デジタルマーケティング関連のイベント「ad:tech tokyo 2012」において、ネット上のデータに基づいて主要政党の支持率や、アイドル歌手の人気が急上昇(ブレイク)できるかどうかを計測する試みについて、講演した。同氏はこの5月にも同様の取り組みでAKB48の総選挙結果を予測し、選抜メンバー16人中15人を当てた実績を持つ(関連記事1関連記事2)。

各政党や党首のブログへの書き込み内容から指標を作成

 まず「i love data」で10月29日から公表を始めた「永田町インデックス」について説明した。同サイトは、ソーシャルメディア分析などを手がけるホットリンクとルグランが共同で運営しているサイトである。

 このインデックスではホットリンクが提供するデータを加工して2種類の数字を表示している(写真1)。1つ目が政党別の「ポジ率」およびその「増減率」で、ルグランの泉氏によれば、各政党・党首のブログに対する書き込み内容についてネガ/ポジ分析を行ったうえで、ポジ率の7日間移動平均値を日次で求めて指標とし、グラフ表示している。また、その移動平均値の1週間前に対する変化率を増減率として表示しているという。2つ目が、Twitterにおける各政党・党首に関するツイート数のシェアで、これは政党別シェアを円グラフにして、直近と、1週間前のものを掲載している。今回は主に、ネガ/ポジ分析に基づいた折れ線グラフを見ながら解説した。

写真1●新指標「永田町インデックス」の算出方法
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 まず民主党の動向を観察すると、野田佳彦首相が党代表選で再選された9月下旬が支持率のピーク。以後はほぼ下降トレンドにある(写真2)。さらに、自民党と民主党のグラフを重ね合わせると(写真3)、10月中旬までは、両党とも似たような下降傾向を示していた。だが、10月下旬からは民主党の人気が下落し、自民党の指標が上昇傾向にある。

写真2●新指標で見た民主党に対する支持率推移
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写真3●10月下旬から自民党は支持率上昇、民主党は支持率低下傾向
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 これは田中慶秋・前法務大臣の暴力団関係者との交際スキャンダルが話題となった時期と合致する。このことからルグランの泉氏は「他党との連携や役員人事などで悪い評判が立ったとしてもその程度では、ある党から別な党へ浮動票が移るほどのインパクトはなさそうだ。だが、時としてスキャンダルは浮動票の移動を起こすほどのインパクトを持つようだ」と見ている。

写真4●日本維新の会に対する支持は、10月下旬からやや持ち直している
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 日本維新の会についても同様に観察すると、ほぼ10月中旬まで下落一途にあったが、同党代表の橋下徹氏に関して差別的表現を含む連載記事が週刊誌に掲載され、抗議する事態が発生した後は、結果的に指標は底を打って持ち直している(写真4)。

 今後は石原慎太郎・前東京都知事が結成する新党を観察対象に加えるほか、都知事選挙などでも同様な計測をすることを計画している。ただし、これらの指標はあくまで提案段階のもので、当事者である政界側に有効性を認知してもらうのはこれからの段階のようだ。「こうしたネット上の評判をモニタリングする活動を通じて、実際の政策などに影響力を持ち得るネットコミュニティーの在り方などについても考察を深めていきたい」とデータ提供で協力しているホットリングの内山幸樹代表取締役CEOは語る。