写真●英インペリアルカレッジ ビジネススクール副校長 David Gann氏
写真●英インペリアルカレッジ ビジネススクール副校長 David Gann氏
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 英インペリアルカレッジ ビジネススクール副校長のDavid Gann氏(写真)が11月1日、パシフィコ横浜で開催中の「Smart City Week 2012」(主催:日経BP社、特別協力:横浜市、2012年10月29~11月2日開催)に登壇、「デジタルシティ・エクスチェンジとその展望」と題して講演した。

 デジタルシティ・エクスチェンジとは、ロンドンで展開されているプロジェクト。交通や健康などに関連するビッグデータから新しい都市サービスを生み出すのが目的だ。同プロジェクトについてGann氏は、大きく2つの点を強調した。1つは、道路の渋滞のように、人間の活動とインフラのバランスが崩れることで必要な行動が取れなくなるといったリスクの軽減である。

 もう一つは、従来の価値観や分類に基づく縦割りの組織や発想の転換だ。転換が図れないと「センサーネットワークによって集まる膨大なデータの活かし方に支障が出る」(Gann氏)という。

 具体的には、データを介して現実の状況を把握できるようになればなるほど、新たな都市のサービスに落とし込み実現すべきことが増えてくる。だがそこで、交通なら交通関連部署、健康なら健康関連部署、エネルギーならエネルギー関連部署などと、行政や企業の別を問わず、縦割りの組織によってサービスが構想されていくのが現状だ。

 「それこそが問題だ」と、Gann氏は指摘する。都市における課題は、さまざまな要素の融合によって成り立っているだけに、インフラ間の相互作用を考慮できなければ、センサー情報を効果的に生かすサービスは実現できないからだ。

 世界的に都市人口の過密化が進む中で、交通や健康、エネルギー、食料など生活に必要な物資や機会、スムーズな活動を確保していかなければならない。Gann氏は、「センサーデータやICT(情報通信技術)を生かしながら、分野横断型の発想で都市サービスを開発していかない限り、(スマートシティは)実現しづらいだろう」とする。