写真1●「アドテック東京」で講演する米Facebookグローバル・クリエイティブ・ソリューション・ディレクターのマーク・ダーシー氏
写真1●「アドテック東京」で講演する米Facebookグローバル・クリエイティブ・ソリューション・ディレクターのマーク・ダーシー氏
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 デジタルマーケティング分野における国内最大級のカンファレンス「アドテック東京」(ad:tech tokyo、ディーエムジー・イベンツ・ジャパン主催)が2012年10月30日から31日までの2日間の日程で、東京都千代田区の東京国際フォーラムで開幕した。

 30日朝の「オープニングキーノートセッション」には、米Facebookグローバル・クリエイティブ・ソリューション・ディレクターのマーク・ダーシー氏(写真1)が登壇。Facebook入社以前は広告業界の経験が長いダーシー氏は、独自の視点でFacebookなどソーシャルメディアが及ぼすマーケティングの変化について語った。

 日本でFacebook幹部が公の場で講演するのは珍しい。以下で約60分にわたる講演の様子を詳しく報じる。

Facebookは新しくない、人類の根源にかかわるもの

 ダーシー氏は最初に「Facebookは“古いもの”だと認識してほしい。Facebookやソーシャルメディアを理解したいのなら、家に帰って家族と会話し、喜びを分かち合うのが一番いい。Facebookのシェアや『いいね!(Like!)』の概念は、何も新しくはなく、人類の根源的なものだ」と話した。

 さらに、Facebookの利用者数が全世界で10億人を超えた(関連記事)ことなどを示しつつ、「家庭と違うのは、Facebookでは根源的なコミュニケーションを世界中で、数千万人単位で普遍的にできるようにしているという点だ」と言う。「どんなに技術が変化しても、人が基軸であり、人の洞察に焦点を当てることが重要だ」と付け加えた。

 ダーシー氏はFacebookを特徴づけるキーワードとして、「authentic」(実名性)という言葉に繰り返し言及した。ダーシー氏は自身のFacebookのタイムライン画面などを示しながら、「実は私も、Facebookを利用し始めるまで、自分の写真をウェブに出したことがなかった」と打ち明けた。そして、匿名ではなく実名で、実在する人同士がつながっていることがFacebookの大きな特徴であり、だからこそ人を基軸としたコミュニケーションが成立することを改めて強調した。

全てのビジネスはローカル

写真2●ダーシー氏が人を基軸としたコミュニケーションの重要性を説明する時に示したスライド
写真2●ダーシー氏が人を基軸としたコミュニケーションの重要性を説明する時に示したスライド
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 そのうえで、Facebookをビジネスに生かす場合、「全てのビジネスは“ローカルビジネス”であるという原則に立ち返るべき。これはビジネスの規模が大きくなっても同様だ」とダーシー氏は語った。

 具体的には、地元のお気に入りの飲食店を例示した。気に入って何度か通えば、そこの店主とは顔なじみになる。食べたい料理を伝えれば、店主は一生懸命材料を仕入れようとする。知人にその店を紹介して、実際に知人が来店して「いいね!」と言ってくれれば、自分にとっても誇らしく思える。

 こうした、地元レベルでよくある現象が、世界規模で起きるのがFacebook上のソーシャルの世界だと言う。ここでダーシー氏は、大手コーヒーショップチェーンであるスターバックスのカップに「マークさん」と日本語で手書きされた写真を示した(写真2)。そして、「いくら企業規模が大きくなっても、対市場や対顧客層などではなく、対個人とのつながりを考えるべきだ」と説いた。